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「もう釣りに行くこともできない…」パリ五輪サーフィン開催地の地元住民から不安の声。米メディアも懸念「五輪が街にやってくることは祝福でもあり、呪いでもある」

THE DIGEST編集部

2024.02.22

 前出の『SURFER MAGAZINE』は、タヒチのチョープーは「世界屈指の難易度を誇るサーフスポットであり、視聴者に十分なエンターテインメントを提供することは間違いない」と高く評価し、期待も寄せつつも、しかし「2024年パリ大会が近づくにつれ、大会の準備が、サーフィンと漁業の盛んなこの田舎町の環境に悪影響を及ぼしている」と指摘した。

 チョープーについて、住民は「この波はとても特別なものです」と語り、続けて「もう1年近くも毎日、毎日、彼らは川を掘って、掘って、掘り続けている。なぜなのかわからない。私たちの水は汚れていて、もう釣りに行くこともできない。とても汚いんです」とサーフィン開催に伴い、準備を進める過程で既に、自然環境やチョープーに住む人々の生活に被害が出始めていることを告白した。
【画像】タヒチ出身の写真家が捉えた"世界最高峰の波"をチェック
 
 また同メディアはチョープーでの五輪開催で物議を醸している主な原因のひとつとして「波に面したリーフに設置される予定の新しい審判塔」を挙げ、「アルミ製の巨大なもので、設置はすでにリーフの生態系にダメージを与えている」と指摘し、続けて、環境活動家のシンディ・オトセナセックも「バージ(川や運河で砂利やごみなどを運ぶ平底船)を使った最初のテストでは、サンゴの一帯が壊れてしまった。パリ2024はオリンピックを開催するためにサンゴを犠牲にしたのだ。このタワーの建設に携わった科学者で、この建設が波に影響を与えないと断言できる者はいない」と、審判塔の建設でサンゴの一部を破壊した事実を述べている。

 タワー建設でサンゴの一部を破壊した事実について、『AP通信』は、パリオリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会のシニアイベントマネージャーであるバーバラ・マーティンス・ニオ氏の「私たちにとってはひどい出来事でした」とのコメントを紹介した上で、同メディアは「地元団体との交流は現在改善されつつあり、組織チームはいくつかの問題について一歩後退し、建設作業が完全に透明化されるよう、地元団体をよりよく巻き込んでいる」と綴り、解決に向けて進んでいることを伝えている。

 米老舗サーフィン専門誌『SURFER MAGAZINE』は記事の最後に「オリンピックの主催者側は、地元住民や活動家たちの環境問題への懸念に耳を傾けている。審判塔は縮小された。しかし、それでも彼らは前進を続けている。そしてすべてが終わったとき、パリ2024がチョープーに与えるダメージはまだわからない」と警鐘を鳴らし、「環境はとても壊れやすい。もしそうでなければ、私たちはすべてを失うでしょう。すべてをね」と締めくくり、パリ五輪の開催地のチョープーで起きている現状について伝えた。

 現在、五輪側は住民からの反発の声を受けて、審判塔の規模を縮小する方向で進めている。しかし、環境保護活動家や地元の漁師たちからは、審判塔の建設時に行う、サンゴ礁への掘削がシガテラ(天然毒。渦鞭毛藻と呼ばれる微細藻の一種を魚介類が食べ、食物連鎖によって魚の毒化が起こるー引用元:沖縄県庁公式サイト)を呼び寄せるのではないかとも言われている。

 もしリーフに亀裂が入れば、"世界で最も有名"と言われたリーフブレークが失われる可能性も否定はできない。五輪開催で揺れるチョープー、今後の動向にも注目していきたい。

構成●THE DIGEST編集部

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