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なぜ桜の戴冠をできたのか。ステレンボッシュの「潜在能力」「国枝厩舎の手腕」「モレイラ騎手の絶妙技術」の“三位一体”が最高の結果を生む【桜花賞】

三好達彦

2024.04.09

 ステレンボッシュは、父がエピファネイア。牝馬三冠のデアリングタクトや皐月賞、天皇賞(秋)、有馬記念を制したエフフォーリアなどを輩出している。母はブルークランズ(父ルーラーシップ)という血統で、ノーザンファームにて生産された。

 同馬のオーナー名義は代表者であるノーザンファームの吉田勝己氏になっているが、実際は共同馬主制度に準じたクラブ、社台グループオーナーズの持ち馬である。牝馬ながら総額5000万円(500万円×10口)で募集され、しかもアパパネとアーモンドアイという2頭の三冠牝馬を世に送り出した国枝調教師に託されたわけで、本馬の評価が相当に高かったことが窺える。

 ステレンボッシュがその高い能力を見せつけたのは、昨秋の阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ、阪神・芝1600m)である。単勝5番人気で臨んだこの一戦で彼女は後方11番手から爆発的な末脚を繰り出して、勝ったアスコリピチェーノにクビ差まで迫ったのである。

 このレースのレベルの高さは走破タイムにも表れており、翌週の朝日杯フューチュリティステークス(GⅠ、阪神・芝1600m)の勝ち時計「1分33秒8」より”1秒2”も速かったのが話題になった。そして、今回の桜花賞が阪神ジュベナイルフィリーズの1、2着馬に占められたことによって、その事実が証明されたのである。

 桜花賞3勝目を挙げた国枝調教師と、その厩舎スタッフの手腕は見事と言うしかない。そのうえで言うと、今回初めて鞍上に迎えたジョアン・モレイラ騎手のケタ違いの技術には舌を巻いた。スタートは遅めだったが、スムーズにインの8番手まで位置を押し上げて距離損を抑えて直線に向くと、抜け出す際にはチェルヴィニアをブロックしつつ、末脚を引き出すという離れ業を見せている。「マジックマン」の面目躍如たる見事な手綱さばきだった。

 着差は僅かだが、手応えに余裕があったステレンボッシュ。モレイラ騎手は「距離が伸びても問題ないと思います」と太鼓判を押しており、オークスへ向けて視界は良好。二冠制覇に向けて、楽しみは増すばかりだ。
 
 敗れたとはいえ、コンマ1秒差2着のアスコリピチェーノはスタート後の行きっぷりがあまり良くなかったが、直線で進路を確保してからはさすがの伸び脚を見せて僅差まで迫った。マイラー、スプリンターを多く送り出しているダイワメジャー産駒だけに陣営は進路を迷うことだろうが、マイル路線に進めば好勝負必至だと見ている。

 一方、オークスに大きな期待が持てそうな他のメンバーはどうか。3着のライトバックと4着のスウィープフィート、加えて8着に終わったクイーンズウォークだろう。

 前者2頭は後方からレースを進め、直線では目の覚めるような末脚を繰り出して勝ち馬に際どく迫った。両馬の父はダービー馬のキズナと、種牡馬として人気が高まっているスワーヴリチャードであり、ともに距離延長に不安はない。勝ち切るシーンまで含めて、あらためて見直したい。

 また、キズナ産駒のクイーンズウォークはレース前から「オークス向き」というコメントが陣営から出ていた馬。今回は馬群に揉まれたこともあって伸び切れずに終わったが、こちらも府中の2400mに舞台が替われば再評価すべきだろう。

 最後に触れておきたいのは、5番人気という評価を大きく裏切り16着に大敗したコラソンビートである。スタートが良すぎたことが裏目に出た感はあるが、あそこまで折り合いを欠くとはまったく予想外だった。

 鞍上の横山武史騎手はレース後、「思い切って逃げてみるプランも、ありだったかもしれません」と語ったようだが、結果は別として、そうすべきではなかったか。同時に、「前走の1400m(フィリーズレビュー)でもギリギリで、1600mは(距離が)長かったかもしれません」ともコメントしているが、それを克服するプラスアルファを期待したのは筆者の思い入れが強すぎたのかもしれない。

取材・文●三好達彦

【動画】桜の女王はステレンボッシュ!激闘の桜花賞をプレイバック
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