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米ダート最高峰の舞台で僅差の激走を見せたフォーエバーヤングの底力に感服。頂点逃すも、日本競馬にとって大きな足跡残す【ケンタッキーダービー】

三好達彦

2024.05.08

今年のケンタッキーダービーは最後まで大激戦に。勝利したのは地元のミスティックダン(奥)だった。(C)Getty Images

今年のケンタッキーダービーは最後まで大激戦に。勝利したのは地元のミスティックダン(奥)だった。(C)Getty Images

 レース後、取材を受けた矢作調教師は湧き出してくる涙に言葉を詰まらせながら、「ただひと言、悔しいです。馬は素晴らしかったです。すごく頑張ってくれました」と愛馬に労いの言葉をかけた。続けて、「日本の馬にとって全く慣れない環境のなかで、これだけ走れる彼には本当に頭が下がります」と脱帽する。

 だが、やはり悔しさは隠し切れなかった。「あそこまで行ったので勝ちたかったです。この経験は今後に活かさなければなりませんし、間違いなく活きてくると思います。世界一の馬になれるように一緒に歩んでいきたいです。応援してくださった皆様、すみませんでした」と頭を下げてコメント。頂点まであと数センチのところで手が届かなかった悔しさを胸に、競馬場を後にした。

 筆者が矢作調教師の言葉を聞いて感じたのは、ただ悔しいだけではなく、日本のホースマンなら憧れない人はいないであろう大舞台で、愛馬が勝ち負けに加わる堂々とした競馬を見せたことに対する感激も加わっていたのではないか、ということである。

 一方、想定外の事態にも慌てず相棒を導いて好勝負に持ち込んだ坂井騎手は、「悔しいのひと言です。この素晴らしいレースに騎乗させて頂いたことを感謝したいです。競馬にいくと、(フォーエバーヤングが)すごく良い状態で、あそこまでいけたなら勝ちたかったです。応援して頂きありがとうございました」と冷静に語り、目前の大魚を逸した悔恨を滲ませていた。

 矢作調教師と坂井騎手は、今回のリベンジを秋のブリーダーズカップ・クラシック(米G1、デルマー・ダート2000m)を舞台に成し遂げようと目論んでいるかもしれない。それぐらいの自信を持ち帰れたのは陣営のみならず、日本競馬全体にとっても非常に大きなプラス材料となるだろう。
 
 それにしても、能力の高さはもちろんのこと、中東から米国へ転戦しながら世界のダート戦線におけるトップ・オブ・トップの舞台であるケンタッキーダービーで、負けてなお強しの競馬をしたフォーエバーヤングの逞しさは、どう表現していいか分からないレベルの凄みを感じさせた。ダートでは昨年のドバイワールドカップ(G1、メイダン・ダート2000m)を制したウシュバテソーロ(牡6歳(※当時。現7歳)/美浦・高木登厩舎)の時にも記したが、芝以上にダートでの世界最高峰は遠いものと思い込んでいたオールドファンの意識を根底からひっくり返す圧倒的なファクトである。近年、海外遠征の際に「勝つために行く」と口にする日本のホースマンが多くなったのも宜なるかな、とあらためて感じた次第である。

 なお、優勝したミスティックダンは、前走のアーカンソーダービー(G1、オークローンパーク・ダート1800m)での3着から巻き返しての戴冠で、これが初のG1制覇。JRAプールでは単勝オッズ31.3倍の10番人気(EQUIBASE社から提供された想定オッズでは11倍の7番人気)という穴馬だった。また、前走のフロリダダービー(G1、ガルフストリームパーク・ダート1800m)で2着に2秒3もの大差をつけて圧勝し、本レースで1番人気のフィアースネス(牡3歳/米・T.プレッチャー厩舎)は見せ場も作れず15着に沈んでいる。

文●三好達彦

【動画】快挙まで、わずかハナ+ハナ差…米ダート最高峰で健闘したフォーエバーヤングの激走
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