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【名馬列伝】ハーツクライ、ゼンノロブロイら牡馬勢をねじ伏せ39年ぶりの偉業を果たしたスイープトウショウ。名門牧場の底力を示した個性派名牝の生涯

三好達彦

2024.06.15

 エンドスウィープは、米国の大種牡馬ミスタープロスペクター(Mr. Prospector)系に連なる名馬・名種牡馬フォーティナイナーの直仔。日本に繋養されたものの、転倒による怪我が悪化して急逝したため、わずか3世代しか産駒を残していないが、その中から活躍馬が続出した。ラインクラフト(05年桜花賞、NHKマイルカップ)、アドマイヤムーン(07年ドバイデューティーフリー、宝塚記念、ジャパンカップ)などに先んじて活躍したのが、今回取り上げるスイープトウショウだった。

 それだけにとどまらず、米国から輸入した産駒のサウスヴィグラス(03年JBCスプリント)は競走馬としても種牡馬としても大成功を収め、それを受けて米国に残した活躍馬のスウェプトオーヴァーボード(GⅠ馬のレッドファルクス、オメガパフュームの父)が種牡馬として輸入されている。
 
 前置きが長くなったが、スイープトウショウの話に入ろう。

 トウショウ牧場時代から能力の高さを評価されていたが、気性の難しさが憂慮された。気分が向かないと厩舎から出ようとせず、放牧されても他の馬を威圧する女王様気質だったからだ。

 その気質は競走馬としてデビューしてからも、彼女のキャリアに大きな影を落とす。しばしば馬房から出ることを拒否したり、調教に向かっても立ち止まってコースに入ろうとしなかったりと、厩舎スタッフを困らせた。またレースに行っても、何度もゲート入りをむずかったため、たびたびゲート試験の処分を受けている。ゲート入りの悪さは延々と付きまとい、枠入り不良でスタート時刻を2~4分遅らせたことで、4度もの処分を受け、最長で30日の出走停止を申し渡されたほどだった。

 そうした気性難を宿しながらも、彼女のきょうだいを預かってきた調教師・渡辺栄(栗東)の巧みな調教法は、「彼女の意志に逆らわない」というスタンスで接することによって意外な安定感を見せる(※渡辺栄の定年引退により、03年1月23日付けで彼女は同門の鶴留明雄厩舎へ転厩する)。05年の毎日王冠(6着)と06年の有馬記念(10着)で惨敗した以外は常に掲示板に載り続け、生涯成績は24戦8勝〔8・4・2・10〕という優れた記録を残した。
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