専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
その他

【名馬列伝】ハーツクライ、ゼンノロブロイら牡馬勢をねじ伏せ39年ぶりの偉業を果たしたスイープトウショウ。名門牧場の底力を示した個性派名牝の生涯

三好達彦

2024.06.15

 彼女はデビューから2戦連続で圧勝したころから大きな注目を集め、チューリップ賞(GⅢ)を制したことから桜花賞(GⅠ)でも2番人気に推されるほどだった(結果は5着)。続くオークスでも4番人気に推され、逃げ切ったダイワエルシエーロを強烈な末脚を駆使して追い込み、3/4馬身差に迫る2着に健闘した。

 2004年の秋、初戦のローズステークス(GⅡ)を3着としたスイープトウショウは、続く秋華賞(GⅠ)では後方集団から1頭だけ他の17頭とはまったく違う爆発的な末脚を繰り出し、先に抜け出したヤマニンシュクルを捉えると半馬身差で優勝。ついにGⅠウィナーの仲間入りを果たし、ファンに名門トウショウ牧場の底力を再認識させた。

 翌春は、単勝1番人気で出走した都大路ステークス(OP)で5着に敗れるが、10番人気と評価を落とした安田記念(GⅠ)では、またも驚異的な末脚を繰り出して、アサクサデンエンにクビ差の2着に激走。牡馬相手にも引けを取らない能力の高さを示すと、続いては宝塚記念(GⅠ)へと駒を進める。

 タップダンスシチー、ハーツクライ、ゼンノロブロイ、スティルインラブ、アドマイヤグルーヴら、牡牝のトップホースが顔を揃えたこの一戦。いつもより前目の8番手を進んだ11番人気のスイープトウショウは、第3コーナーから馬群の外から位置を押し上げ、絶好の手応えで直線へ向く。そして、鞍上の池添謙一からのゴーサインを受けると力強くスパート。先に抜け出したリンカーンを捉えると、激しく追い込むハーツクライ(2着)とゼンノロブロイ(3着)を抑え切り、クビ差で勝利を掴んだ。単勝オッズは38.5倍の波乱を起こすとともに、エイトクラウン以来39年ぶり、史上2頭目の牝馬による宝塚記念勝利という快挙を成し遂げたのだった。
 
 スイープトウショウはその後も好走を続け、翌年の秋には自慢の強力な末脚の切れを活かしてエリザベス女王杯(GⅠ)を制覇。宝塚記念での激走がフロックではないことを証明し、翌年の本レースで2着、同じく翌々年は3着と活躍を続け、それを最後に引退。繁殖牝馬としてトウショウ牧場へと帰還した。

 残念なことにトウショウ牧場はそのあと目立った活躍馬を出せないまま、馬主登録は残しつつ、15年に閉鎖。スイープトウショウら繁殖牝馬はノーザンファームに売却された。そして、稀代の悪癖を有する名馬として一世を風靡した彼女は20年、腸捻転を起こして19歳で急死。名門牧場が送り出した誉とともに生涯を閉じたのだった。

 このあと、日本競馬は「牝馬の時代」と呼ばれるほどに牡馬を相手に互角以上の成績を残す馬が増えた。しかしスイープトウショウは、その波の中に埋没させるのはあまりに惜しい個性派の名馬である。(文中敬称略)

文●三好達彦

【関連記事】【名馬列伝】強烈な印象を残したダイワスカーレットの強さ! “牝馬の時代”を象徴したウオッカとの「二強対決」を振り返る
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号