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マラソン・駅伝

なぜ“区間新ラッシュ“は生まれたのか。箱根新時代の扉を開けた「ヒト」と「モノ」の進化

佐藤俊

2020.01.05

 元日に行なわれたニューイヤー駅伝では、大会記録を優勝の旭化成、2位のトヨタ自動車、3位のHondaと3チームが更新し、区間新は7区間中4区間で生まれている。

 高速化のうねりは高校、そして実業団へとつづき、箱根駅伝を飲み込んだ。

 その背景には、練習メニューの改善による個の質の向上がある。

 例えば、実業団は横並びの練習ではなく、個々が狙う種目やレベルに応じて、全体練習以外のプラスアルファを個人で考え、行なうようになった。練習の質とともに意識も変わり、練習前後のケアや食事や身体にかける時間が多くなる。するとさらに質の良い練習ができる。相乗効果で個人の質がどんどん上がって行った。マラソンで設楽や大迫が日本記録を破ってきたのは、練習量と質が向上したからに他ならない。

 大学でも同じような現象が起きている。今回の青学大はわりと長距離にフォーカスして練習してきたが、他大学のハイレベルな選手は、その種目を中心に練習メニューを組み立てている。今回2区で怪物級のタイムを出した相澤もトラックで1万mなどをメインにスピードを磨き、それをロングに繋げていく練習に取り組んで、自らの才能を開花させた。
 
 そして、向上した人間の能力を100%引き出す役割を果たしているのが、シューズだ。

 ナイキの「ヴェイパーフライネクスト%」は、今回の箱根駅伝でも各選手の圧巻の走りを支えた。このシューズの着用者が、なんと10区間のうち9区間で区間賞を獲り、6区間で区間新を出したのだ。個人の質の向上とシューズがベストマッチし、レベルを飛躍的に向上させ、数年前には考えられないような恐ろしいタイムが出るようになった。

「この高速化の波は止められない」

 駒澤大の大八木監督、東海大の両角監督がそう語るように、これからは高速を越え、超高速化の時代に突入していくだろう。

 チームの強化も高速化に対応して、より革新的になって行かざるを得ない。そこに乗り遅れたチームは箱根では勝てなくなる。強豪校、伝統校はもちろん、予選会を戦うチームもそこに一早く反応し、対策をしてきたところが生き残る。

 また、スカウティングも多様化するだろう。高校生たちは、大学の名前や奨学金だけではなく、独自の視点で進路を選択するようになり、大学間の戦力バランスが均等化していくに違いない。

 今回、國學院大、帝京大、東京国際大、明治大の4校が3位を懸けて10区のゴールまで争ったように来年は上位と下位の差がさらになくなるだろう。

 今年の箱根駅伝は、カオスの幕開けだ。
「戦国駅伝」は来年以降、より高度でかつ苛烈な戦いになる。

取材・文●佐藤俊(スポーツライター)
 

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