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食と体調管理

「スポーツは楽しくて心身を健康にしてくれるものであってほしい」怪我と重圧に耐え続けた元バレーボール日本代表・大山加奈さんが感じたスポーツの価値と日々を支える食習慣

元川悦子

2024.10.01

写真提供:日本バレーボール協会

写真提供:日本バレーボール協会

――成徳中学で3年の時に頂点に立ち、成徳高校に進んでからは、ともに日本代表でプレーした元日本代表キャプテンの荒木絵里香さんと出会います。

 絵里香とは高校2年の終わりくらいまではあまり仲が良くなくて、あんまりコミュニケーションを取っていなかったんです。絵里香は高校からチームに加わった選手で本格的にバレーを始めたのも高校からだったと思います。一方で私はずっと日本一を目指すための環境でバレーをしていたので、スタンスが全く違ったんです。当時の私は「日本一になるためにはこうすべき」「こうあるべき」というのが凄く強かった。

 キャプテンでもあったので、自分の価値観をみんなに押し付けるところがあったんですけど、絵里香はそういうタイプじゃなかった。自分と違う考え方を持つ絵里香のことをなかなか受け入れることができなかったんですよね。

――最初は理解し合えなかったんですね。

 そうなんです。そのまま2年のラストになり、春高バレーの東京都予選で負けてしまった。第二代表で全国大会には出られる状況だったんですけど、東京で負けたことが物凄くショックで、そこで絵里香と大ゲンカをしたんです。

 初めて腹を割って話し合って、実は私と絵里香は態度や行動は違うけれども、本気で日本一を目指しているし、チームのことを本気で考えている。その気持ちは一緒だと分かった。「自分と違う考え方を持つ人のことを排除したらダメだな」ということに気づきましたね。それと同時に「相手の表面上の行動だけを見て、『この人はこうなんだ』と決めつけちゃいけないんだ」ということも学びました。

――完全に気持ちが通じ合ったんですね。

 そこからはお互いに力を合わせてやれるようになり、チームもぐんぐんと強くなっていって、3冠を達成することができました。あの時ケンカしてくれて、怒ってくれた絵里香に本当に感謝ですね。それまでの私は遊びがないタイプで、「バレーやってる時は笑うな」みたいなことを言ってしまう人間だったと思います。だから絵里香みたいな「もっと感情を爆発させていい」「チャンスボールは私が決める」みたいな考え方に触れて、肩の力が抜けたんですよね。日本一になるためには、それぞれで違うやり方もあると分かったし、もっとみんなが伸び伸びやっていいんだと思えた。自分自身に大きな気づきを与えてくれた出来事でした。
 
――6年間師事した小川先生の存在も大きかったんでしょうね。

 小川先生の素晴らしいところは「否定から入らない」ということ。絶対に私たちを否定しないんですよね。どんなことがあっても、まず共感や肯定をしてくれた上で、どうすべきかを考えさせてくれるような言葉がけをいつもしてくれました。

 やる気が全く湧かない、モチベーションが上がらない時期がありましたけど、「カナは世代のトップをずっと走ってきたんだから、そんな時期があるのは人として当たり前だよ。いつもいい子という必要はないよ」と声をかけてくれましたね。「またモチベーション上がった時にカナが困らないように最低限のトレーニングだけはやっておいた方がいいんじゃないの」といった優しい言い方をしてくれました。

 どんなときでも「やる気を出せ」と厳しく指導をされる方もいるかもしれませんが、先生は全くなかった。一番大事にしていたのは「バレーボールを嫌いにさせないこと」だったので、それは今も本当に大事だなと思いますし、バレーボールと携わる上での自分の軸になっています。

――長期的な目線で選手を育てようとしていたんでしょうね?

 そうですね。私とか絵里香みたいに大きい選手を他の選手と同じ練習量にしてしまうとケガなどのリスクがあるということで、休みも多かったですし、レシーブ練習のボール出しとか、みんなに分からないように少し練習の強度を下げてくれていたみたいです。先生から直接聞いたわけではなくて、卒業してから何かのインタビューで先生が答えているのを初めて見て知りました。「そうだったんだ」とビックリした覚えがあります。
 

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