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フィギュア

なぜ日本フィギュアがNHK杯男女シングルSPトップ3を独占できたのか。異例の快挙を紐解くキーワードは“一体感”

湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)

2024.11.09

男子は鍵山(左上)がトップ。三浦(右上)は2位につけた。一方の女子は坂本(左下)が首位で千葉(右下)が2位だ。写真:田中研治(THE DIGEST写真部)

男子は鍵山(左上)がトップ。三浦(右上)は2位につけた。一方の女子は坂本(左下)が首位で千葉(右下)が2位だ。写真:田中研治(THE DIGEST写真部)

 日本男子の勢いは、実は女子に大きな勇気を与えていた。2番滑走の青木はショート『アディオス・ノニーノ』を華麗に演じ切り技術点36.89、演技構成点32.89点の合計69.78点をマーク。得点を確認すると、自身も驚きのリアクションを見せるほど会心の演技だった。

 青木は試合後、「(SP10位だった)スケートアメリカのリベンジができた」と笑顔で振り返ると、日本男子のパフォーマンスに感銘を受けたことを明かした。

「バスの中で壷井選手の演技を見て、去年悔しい思いをしているのを知っていたので、自分も嬉しい気持ちになりました。そのあと会場に着いて、鍵山選手を映像で見て『さすがだな』という気持ちと、会場の雰囲気も絶対に見たかったので、三浦選手の演技は実際に会場から上で見たんですけど、歓声だったり拍手だったり、これから自分も味わえるんだなと思って、自分を奮い立たせてくれた感じでした」

 昨季はシニア1年目ながら年末の全日本選手権で2位、さらに四大陸選手権で初優勝を果たすなど、大きく飛躍を遂げた19歳の千葉は可憐なピンクの衣装を身にまとい登場した。滑らかでしなやかなステップを見せ、ジャンプはすべて成功。伸び伸びとした演技で、こちらも自己ベストを更新する71.69点でキスクラでは笑顔が弾けた。同選手も男子の結果には大いに刺激を受け、「ジャッジスコアを見て、みんなすごいいい感じだなと思った。会場の雰囲気もいい演技ができる雰囲気になっているに違いないと信じて、6分間練習に踏み込みました」と話し、大きなエールになったと答えた。
 
 それに対して坂本は、普段同じ練習拠点で切磋琢磨する盟友の好結果が何より気持ちを熱くさせた。

「会場に向かうバスの中で(男子の)結果は知ったんですけど、最初は点数だけ把握して、そのあとに順位を見て演技を全員分見たんですけど、何より一緒に練習してきた壷井選手が3位に食い込んだので、本当にそこが自分の中では嬉しかったポイントでした。演技を見て、最後のガッツポーズで泣きました」

 試合に向けてメイクをしている最中だったが、「アイライナーがなかなか引けないぐらい手が震えてたりとかしてたんですけど。本当に自分もやらなきゃってすごい思った。すごいいろんな人からパワーをもらった。身近な人が結果を残して頑張っているのが、より力になっている」と話し、スケーター仲間の頑張る姿が大きな力を与えてくれ、自身のパフォーマンスをさらに引き上げてくれたと強調した。

 個人競技であるフィギュアスケートは、たったひとつのミスで大きく順位が変わってしまう残酷な面を持つスポーツだ。しかし、それぞれの日本選手のコメントを聞くと、まるでチームスポーツかと錯覚してしまうような強い”一体感”が感じられる。海外選手を含め、誰もが素晴らしい演技ができることを願い、全力を尽くし、仲間に活力を与えるような演技をする。異例中の異例とも言えるショートプログラムでの男女トップ3独占は、まさに日本チームが一丸となって掴んだ結果ではないだろうか。

 すべてが決着する勝負のフリー。どんな結果になろうとも、最後までしっかりと見届けたいと思う。

取材・文●湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)

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