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競馬

「あの時できなかったことを…」クロノジェネシス以来、4年ぶりGⅠ制覇をもぎ取った鞍上と陣営の固い“絆”。来春クラシック候補と再び夢舞台へ【ホープフルS】

三好達彦

2024.12.30

 クロワデュノールは、イクイノックス、ウィルソンテソーロ、ソールオリエンスらGⅠ(JpnⅠ)ホースを相次いで送り出しているキタサンブラックの3年目の産駒。6月の東京で新馬戦(1800m)を勝ち上がると、いったん休養。復帰戦となった11月の東京スポーツ杯2歳S(GⅡ、東京・芝1800m)を快勝してここへ臨んでいた。東京スポーツ杯では前走比+24㎏と、成長分を見込んでもやや太め残りだと思われたが、それでも重賞を勝ち切ったことで評価は上昇。本レースには前走比-8㎏としっかり絞り込んで、父譲りの見惚れるような漆黒(青鹿毛)の馬体を誇示していた。

 クロワデュノールを管理する斉藤調教師は、「難しい展開になったなと思いましたが、その中で北村(友一)騎手が上手く誘導してくれましたし、馬もそれに応えて勝ち切ってくれたのは素晴らしいと思います。北村騎手にはクロノジェネシスの時に本当によくしてもらって、最後まで乗ってもらいたいなと思っていたところで大けがをして、最後まで乗ってもらえませんでしたが、あの時できなかった事をこの馬で一緒にやっていけたら最高だなと思います」と鞍上を賞賛した。
 
 2020年の有馬記念(クロノジェネシス)以来、4年ぶりのGⅠ勝利となった北村騎手は、「(レース運びは)思い通りではなかったですが、馬を信じて行ったので、どんな流れになっても自分の競馬に徹して、強い競馬ができました。緩さが解消されて、より動ける態勢が作られていたなと思います」とコメントし、愛馬とスタッフを褒め称えた。

 そして、「またGⅠを勝つことができました。本当にたくさんの方々に助けていただき、応援していただいて、またここに導かれたのだと思います。この場をお借りして、みなさんに感謝の気持ちを言いたいと思います。ありがとうございます」というと、こみ上げるものを堪え切れずに落涙。観客からは大きな拍手と歓声が送られた。

 北村騎手は2021年の阪神競馬で落馬。8本もの背骨に骨折が見られる重傷で、復帰まで1年以上の時間を要した。その間に、愛馬クロノジェネシスは宝塚記念で2連覇を果たし、凱旋門賞へも遠征(7着)。悔しさを噛みしめていた。

 実は北村騎手が治療・休養中に無理を言って電話取材をしたことがある。そのとき彼は怪我でクロノジェネシスを手放すことは仕方ないとしながらも、「クロノはまだ底を見せていません。彼女がどこまで強くなるのか、それを実感できないのが悔しい」と訴え、筆者も胸を締め付けられるような思いをした。それだけに、勝利騎手インタビューでの涙はぐっとくるものがあった。斉藤調教師が「あの時できなかったこと」とは、凱旋門賞遠征だと推察するが、来年はまず国内で好成績を残し、フランスへと飛び立ってくれるように心より願う。
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