プロキャリアで一番良い色のメダルを獲得した。言葉を選ばず、率直な気持ちを叫ぶとしたら？と尋ねると、「欲張っちゃうと、やっぱり個人賞が欲しかったな...」と、本音をポロリと漏らした。

　さらに、会場に詰めかけた大勢のサポーターたちが「MVPに予想したのは石川だった」と伝えると、日本の大黒柱はこう答えた。

「いやぁ、事実ではないので。目に見えるものじゃないので...（正直）やっぱり欲しかったです。欲しかったのもありますし、もちろんジャンネッリ選手のMVPは僕もめちゃくちゃ嬉しいし。でも欲を言えば、やっぱり自分も取りたいなと。そういう場所を目指してきているので、個人的なことですけど『MVPを獲れる活躍ができなかったな』っていう悔しさがあります。そこは、まだまだ成長できるところなので、次にそこを目指して戦っていきたいなと思います。でもこのチャンピオンズリーグで優勝したことは、実感はこれからですけど嬉しいです。ジャンネッリ選手も初めてで、ペルージャにとっても初めて、日本人（男子）として自分が初めてだし、それはやっぱり嬉しいです」

　ちょうどその時だ。後ろを通った大会MVPのイタリア代表シモーネ・ジャンネッリが立ち止まって石川の頭上から指をさし、「MVP！MVP！」と連呼。チームの誰もが石川の活躍があっての欧州初制覇だったことを感じているはずだ。すると、前述と同じ言葉を繰り返した。

「いやぁ、でも事実じゃないので（笑い）」
  　ポジション別の個人賞が発表される間には、対角OHのプロトニツキと、「２人でずっと『誰が選ばれるんだろうな？』みたいな話はしていましたね。オポジットは絶対にベンタラ選手で、セッターもジャンネッリ選手が選ばれるだろうし、OHはポーランドの選手になるはずなので、そうなったら...」と言葉を交わした。「次は俺か、お前だなみたいな？」と訊いてみると、「そうですね。ミドルブロッカーに他のチームの選手が選ばれた時点で、ペルージャから１人は絶対に最後のOHに選ばれると思っていたんですよ」と明かした。

　果たして結果は...最優秀アウトサイドヒッターを受賞したのはプロトニツキだった。

　２セット先取から追いつかれて迎えた勝負の最終セット、石川がサーブで呼び込んだ３連続ブレークでペルージャは勢いに乗った。終盤には、ハイボールをコートコーナーへ沈めた極上の一打の後、粘る相手に強烈なサーブで引導を渡した。そのインパクト満点のパフォーマンスは、個人賞の投票が２セット目終了時だったため、残念にも評価に反映されなかった。それを知ると、悔しさを滲ませながらこう反応した。

「うわぁ、マジすか!?　悔しいなぁ。それを知っていたらなぁ。２セット目まではアタック決定率がそんなに良くなくて、４セット目ぐらいからちょっとずつ上がり始めていたんですよ。最後のセットもサーブで結構ガンガンいってたんで。あれが考慮されなかったのかぁ...」

　石川が優勝の立役者としてMVPを受賞し、キャリアに刻むべきタイトルは残されている。今季３位に甘んじたリーグ王座奪還と、準決勝で敗れたコッパイタリアの頂点だ。

「そうですね。そこは（今季）逃してしまっているので、もう一度来シーズンに向けて準備しなければと思っています」

　普段通りの落ち着いた口調で取材に応じた背番号14。いつもと違っていたのはその瞳だった。今日は目がキラキラだと最後に声をかけると、「アハハハハ。いやいや、一応優勝したんで！」と、少し照れながら満面の笑みでインタビューを締めくくってくれた。

　新しい環境で獲得した確かな手応え。日の丸を背負って戦う代表で、その成果を見せる日はもうすぐだ。

取材・文●佳子S.バディアーリ

【記事】【現地取材】石川祐希が日本男子バレー初快挙！ “有言実行”を完遂したペルージャの欧州CL制覇「勝つためにここに来た」

【記事】欧州CL制覇を狙う石川祐希。圧巻のパフォーマンスをみせた準決勝直後を直撃！「いつ何時も力を発揮できる準備をしている」

【記事】石川祐希が両チーム最多19得点の大爆発！ 欧州CL決勝に導くMVP級の活躍に会場は大歓声の嵐「ペルージャに来てくれてありがとう！」