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バレーボール

“東洋の魔女“の系譜を引き継ぐ名将、達川実が8年ぶりの現場で感じた女子高バレーの現実と未来

北野正樹

2021.03.18

「教えてもらったことは身につかない。監督やコーチの指導方法を、見て盗めという無言の教えだった」とわかったのは、1年後にコートでの指導を任されるようになってからだった。練習に妥協もしなかった。新米コーチとして干されていた時、小島や吉田に「達川さんのボールも受けたい」と懇願してくれた選手もいた。でも、それは自分のために言ってくれていることばかりでなく、自分がボールを出すと練習が甘くて苦しくないためだったことにも気付いたからだった。なにより、妥協することは選手のプラスにはならないことが分かった。そんな練習こそ、遠くのボールを飛び込んで拾い、起き上がりこぼしのように回転して立ち上がり、次の攻撃に参加する回転レシーブを生み出し、東京五輪で金メダルに輝いたニチボー貝塚の伝統だった。
 
 1995年に吉田から監督を継いだ1年目の第2回Vリーグで優勝。ユニチカの廃部で全体移籍した東レ、転身したデンソーでも黒鷲旗全日本選抜男女選手権で優勝を果たすなど、指導力を発揮。デンソーでは、「やりたいようにして、チームを変えてくれ」と本社役員から依頼され、髪の毛の色を制限したり門限を早めたり休日を変更したりするなど、バレーボールに集中できる環境にして選手の意識を変えて、チーム力を引き上げた。
 
 「ユニチカのコーチ時代に、コーチとして独り立ちする際に、『環境が人を変える』ことを経験した。環境が変われば、指導者だけでなく選手も変わってくれる」と達川。JOCカップ全国都道府県対抗中学大会に奈良選抜女子で出場経験を持つ東久保茉希主将は「これまでと練習時間や練習していることは変わらないが、問題点をその場で説明して教えてくれるので、わかりやすい。うまくなっていく実感がある」と新しい指導者を歓迎する。達川実の名前はそれまで聞いたことはなかったが、「インターネットで調べて、すごい指導者だとわかった」という。

 練習を見学することが多い同校の近森正久理事長も「教え方がわかりやすく、選手の理解も早くなった」と評価している。
 
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