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バレーボール

【女子バレー】31歳で日本代表に“異例”の初選出! ひた向きな努力で“憧れの舞台”を手繰り寄せた青柳京古「夢じゃないんですか」

北野正樹

2023.05.13

青柳の一生懸命な姿は周りの同僚や監督にも刺激を与えている。写真提供:埼玉上尾メディックス

青柳の一生懸命な姿は周りの同僚や監督にも刺激を与えている。写真提供:埼玉上尾メディックス

 31歳での初選出に、埼玉上尾のMB栗栖明歩(24、京都橘大学)は「年齢を感じさせないプレーや、年齢に関係なく女子バレー界での可能性を広げて下さる姿は、本当にカッコいい。折れない心で常に高みを目指すところは頼もしく、学べることも多く目標になります」と語る。

 青柳と同じ31歳で、3年間一緒に埼玉上尾を引っ張って来たOHの内瀬戸真実は「いつも前向きな人で、私もそれに引っ張られた一人。どうしたら代表になれるかを考えて行動をしていて、その結果が結びついたと思います。同級生ということもあり、アドバイスをし合って来たので、私自身もうれしかった」と喜んだ。

 小学1年生でバレーを始め、14年から代表で活躍し続けてきた内瀬戸は、5月の黒鷲旗全日本選抜男女選手権を最後に、ユニホームを脱いだ。キャリアを積み重ねてきた歴史は違うが、同年代だけにことさら常に向上心を失わない青柳をリスペクトするのだろう。

 大久保監督は、青柳の前向きな姿勢に驚いたことがある。監督就任約2か月後に行なわれた岩手県陸前高田市の合宿での夜の出来事。選手一人ひとりに、どのようにバレーと出会い、なぜ今この場所にいるのかなどを「マイヒストリー」と題して発表してもらう場で、青柳はバレーを続けている理由に、代表入りして五輪でメダルをとるという目標を挙げた。

 30歳の大台に乗り、本来なら現役引退を考えてもおかしくない年齢。キャリアを積んだベテランが、臆することなく若手選手のように自分の目標を宣言できる姿に「自分が何を目指しているのかを堂々と言えるのはカッコよく、全力でサポートしたいと思いました。バレーが本当に好きなんだと感じました」と大久保監督。

「監督就任後にも面談をしたのですが、バレーを愛する気持ちが伝わって来ました。普通はキャリアを積んでくると守りに入って、このくらいやればシーズンを乗り切れるという計算が入ってくるものなんです。彼女の場合、それが全くなく常に自己ベストを更新していくという内面のエネルギーがほかの人とは違うと感じました」と続けた。
 
 5月8日に発表されたネーションズ・リーグ(VNL)に登録予定の20人に、青柳の名前はなかった。

 しかし、VNLメンバー以外で編成される9月のアジア選手権(タイ)やアジア大会(中国)などの大会でアピールすれば、A代表に抜擢される可能性はある。

 8日の日本代表女子の記者会見で、眞鍋政義・女子代表監督はサーブの重要性を説き、「どれだけいい選手であっても、サーブが悪ければ代表には残さない」と明言した。

 眞鍋監督からは「高く、速い攻撃はアピールしてくれた。あとはサーブ」と直接、告げられた。

 5月の1カ月間、チームはリーグ戦の疲労をとる意味もあり休養にあてるが、青柳は「攻撃面ではアピールできましたので、次はサーブを磨きます」とコートに立つ。

 一昨年8月に、大学院でコーチ学を学んだ男性(30)と結婚。海外でのコーチ修行も視野に入れる良き理解者と、二人三脚で「課題をつぶす作業」に入る。

 座右の銘は、憧れる元ブラジル男子代表ダンテ・アマラウが気に入って口にしていた「昨日より今日。今日より明日」。

「夢」の実現へ、今日の努力を惜しまない。

取材・文●北野正樹

【著者プロフィール】
きたの・まさき/1955年生まれ。2020年11月まで一般紙でプロ野球や高校野球、バレーボールなどを担当。関西運動記者クラブ会友
 

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