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競馬

【名馬列伝】14年前、未曾有の国難に喘ぐ日本に勇気と希望を与えたヴィクトワールピサのゴール。ドバイの夜空に日の丸を掲げたイタリア人騎手の涙

THE DIGEST編集部

2025.01.18

 勢いに乗ったヴィクトワールピサは4歳初戦の中山記念(GⅡ)で、2008年の皐月賞馬キャプテントゥーレに2馬身半差を付けて圧勝。絶好のステップを踏んで中東へと旅立ち、そこで見せた圧巻のパフォーマンスが日本馬として初となるドバイワールドカップ制覇だったのである。ちなみに、本レース2頭目となる日本馬の勝ち馬が現れるのは、23年のウシュバテソーロまで、12年も待たなくてはならなかった(※20年は新型コロナウイルス感染症の世界的拡大によって延期)。

 その後は、ドバイから転戦した香港(G1のクイーンエリザベスⅡ世カップ)は跛行のため出走を回避。また、秋には再度の挑戦となる凱旋門賞に向けて渡ったフランスでも香港とは別の脚に跛行を生じて、出走を取り止めて帰国するという不運に見舞われた。

 そうした影響も残っていたのだろう。帰国後のヴィクトワールピサはジャパンカップで13着、有馬記念で8着と続けて大敗したため現役を引退、種牡馬入りすることになった。結局、この年はGⅠを1勝しかできなかったが、やはりドバイワールドカップでの勝利が大きなインパクトを与えたからだろう、JRA賞の最優秀4歳以上牡馬を受賞した。
 
 種牡馬としては、その期待の大きさに見合う大成功を収めたとは言い難いものの、2016年の桜花賞(GⅠ)を制したジュエラーを含め、7頭のJRA重賞勝ち馬を輩出している。そして21年シーズンはトルコのカラジャベイスタッドに入り、当地で種牡馬活動を続けている。

 やがて3月が来ると、今年も11日には東日本大震災の14回目の慰霊の日が訪れ、次いでドバイワールドカップ・ミーティング(今年は4月5日)がやってくる。そのたび競馬ファンは、ヴィクトワールピサの健気な走りと、ミルコ・デムーロが悲嘆に暮れる日本の人々に向けて、遠くドバイで誰よりも高く掲げた日の丸のことを思い出す。(文中敬称略)

文●三好達彦

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