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競馬

【名馬列伝】26年前、武豊の日本ダービー連覇をアシストした名牝ベガの仔・アドマイヤベガ。三強対決、偉大な血脈に彩られた特別な馬生

三好達彦

2025.02.15

 食欲の不振で体調が整わず、連敗を喫したアドマイヤベガ。スタッフは彼のコンディションを上げるために心血を注ぎ、その甲斐あって、徐々に馬体に張りが戻る。さらにレースが近づくに連れて、成長分の上積みさえ見られ、スタッフは自信を持って大一番に臨むことになった。

 迎えた日本ダービー。アドマイヤベガとナリタトップロードの単勝オッズは同じ3.9倍だったが、わずかな票数の差でナリタトップロードが1番人気、アドマイヤベガが2番人気となり、3番人気はオッズ4.2倍のテイエムオペラオーだった。俗に言われる「三強ダービー」である。

 はたして、レースは”三強”の激しい争いとなった。テイエムオペラオーが中団の8番手、ナリタトップロードが中団の後ろ目の10番手、アドマイヤベガは後方の16番手をそれぞれ進み、馬群はその長さを縮めながら最終コーナーを回って直線へ向く。3頭のなかで一番早く仕掛けたテイエムオペラオーが直線半ばで先頭に躍り出るが、それをナリタトップロードが交わす。そして、さらに外から息の長い末脚を繰り出したアドマイヤベガが前の2頭をまとめて差し切って優勝した。体調を戻すことに腐心したスタッフの苦労が報われた瞬間だった。

 また、若い渡辺薫彦、和田竜二の焦りを見越し、ワンテンポ遅らせて最後に追い出した武豊の老獪さがひと際輝いたレースだった。そして、母のベガを見初めて、その仔を手に入れることにこだわったオーナー、近藤利一の執念が引き寄せた勝利だったとも言えるだろう。
 
 夏を休養に充てたアドマイヤベガは、始動戦の京都新聞杯(GⅡ、京都・芝2200m)でナリタトップロードをクビ差抑えて快勝。三強は菊花賞(GⅠ、京都・芝3000m)で相まみえ、ナリタトップロードが優勝し、テイエムオペラオーがクビ差の2着となったが、アドマイヤベガは進路を塞がれて追い出しが遅れたこともあって6着に敗れた。

 アドマイヤベガはそのあと体調がなかなか整わず、長い休養に入る。そして7月末、調教後に左前脚繋靭帯炎を発症していることが分かったため現役引退が発表された。

 2001年から社台スタリオンステーションで種牡馬入りしたアドマイヤベガは初年度に145頭、2年目に183頭もの牝馬を集める人気となり、2年目の産駒から桜花賞馬キストゥヘヴン、マイルチャンピオンシップを制したブルーメンブラットを出して、種牡馬としての地位を不動のものとした。

 しかし、好事魔多し。4年目の種付けシーズンを終えた10月末、疝痛を発症して8歳で急死。死因は偶発性胃破裂だった。種牡馬としてのさらなる活躍が期待されるなかでの悲しい死だった。

 GⅠタイトルは日本ダービーのひとつだけだったが、名牝ベガの仔が母と同じ武豊に導かれてトップ・オブ・トップの座に就いたことは、その鮮やかな走りとともに、多くのファンの記憶に刻まれている。

文●三好達彦

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