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MLB

イチローに球宴でランニング本塁打を打たれた長身右腕がレンジャーズのGMに就任。彼の“特殊な経歴”が、MLBの新たなトレンドに?

宇根夏樹

2020.12.11

レンジャーズで投げていた頃のヤング。05年には規定投球回に到達し、リーグ5位の奪三振率を記録した。(C)Getty Images

レンジャーズで投げていた頃のヤング。05年には規定投球回に到達し、リーグ5位の奪三振率を記録した。(C)Getty Images

 メジャー通算79勝を挙げた元投手のクリス・ヤングが5日、レンジャーズのGMに就任した。2007年のオールスターでイチローにランニング・ホームランを打たれたあの右腕だ。ヤングは、身長208センチとMLB史上有数の長身選手だったことでも知られていた。

 レンジャーズでは、05年10月からジョン・ダニエルズがGMを務めてきた。13年の開幕前にダニエルズは編成総責任者兼GMへと昇格したが、この12月からは、ダニエルズが編成責任者、ヤングはその下でGMとなる。ダニエルズの役割が劇的に変わるわけではないが、自身が出した声明に「成功を収めている多くの組織が同様の体制を敷いている」とある通り、近年はGMの上に編成総責任者を置く球団が増えている。多様化する仕事の役割を分担するのが目的だ。

 ヤングはレンジャーズが本拠を置くアーリントンに程近いダラスで生まれ育った。また、04年にメジャーデビューを果たしたのもレンジャーズだった。05年はローテーションに定着して31試合に先発したが、オフに大塚晶則を含む3対3のトレードでパドレスへ移籍した。なお、このトレードを決断したのは現在の上司であるダニエルズだ。
 
 現在、ヤングは41歳。17年に現役を引退したばかりだ。球団のフロントで働いたこともなければ、コーチや監督を務めたこともないが、18年5月からMLB機構に入り、フィールド上の運営に携わってきた。ヤングは、アイビーリーグの名門校プリンストン大出身のインテリでもある。大学時代はベースボールとバスケットボールで活躍し、プロ入り後も学業を続け、政治学の学士号を取得している。

 近年、「アイビーリーグ出身の元メジャーリーガー」は球団幹部として高い人気を集めていて、ヤングもレンジャーズだけでなくメッツのGMの候補にも上がっていた。だが、ヤングは家族と離れてニューヨークに行きたくないと辞退した。11月には、かつて“プロスポーツ界で最も聡明な選手”に選ばれたこともある名門イェール大出身の元リリーバー、クレイウ・ブレズロウが、カブスのGM補佐に就任した。スタンフォード大出身で、レイズやアスレティックスで第4の外野手として活躍したサム・ファルドも、フィリーズのフロントでベースボール・パフォーマンス統合ディレクターの職にある。

 数年先には、アイビーリーグ出身の元選手が編成総責任者やGMに就任するのが、球界の新たなトレンドになっているかもしれない。いわばその先駆けとなったヤングに対し、ダニエルズは「ヤングの経歴と経験は、我々の運営グループにとって大きな資産となる」と期待を寄せている。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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