ヤンキースの主砲アーロン・ジャッジが、MVPを受賞した昨季以上のペースで打ちまくっている。現地６月14日時点で26本塁打、60打点、OPS1.265はいずれもリーグ１位。何より目を惹くのは.390というハイアベレージで、“史上最高の打者”テッド・ウィリアムズが1941年に達成して以来、まだ誰も成し遂げていない打率４割の可能性も取り沙汰されている。

　だが、過去にも何人もの一流打者が４割に挑み、そのたびに跳ね返され続けてきた。その歴史を改めて振り返ってみよう。

　80年、ロイヤルズのジョージ・ブレットがウィリアムズ以来の偉業に近づいた。“ゴージャス・ジョージ”と呼ばれ、歴代19位の通算3154安打を放ったスーパースターはこの年、５月までは打率.301だったものの、７月半ばから30試合連続安打を記録して急上昇。148試合が経過した時点でジャスト４割（403打数161安打）だった。ただし、その後の13試合は打率.304（46打数14安打）。シーズントータルでは.390に終わり、大記録には惜しくも届かなかった。

　ブレットから14年後、今度は稀代の安打製造機トニー・グウィン（パドレス）が迫った。例年以上のハイペースで打ちまくり、すべての月で打率.370と安定した活躍を見せた。110試合消化時点で打率.394をマークして記録更新に期待が集まったが、ストライキによりここでシーズンが打ち切りとなり、挑戦も打ち止めとなった。
  　ここまで挙げた選手のほとんどが、規定打席に達する前に打率４割を切っているが、それを成し遂げたのが2000年のトッド・ヘルトン（ロッキーズ）である。超打者有利の本拠地だけでなくアウェーでも好成績を残し（.353）、８月18日の第３打席時点で433打数173安打（打率.3995で四捨五入して４割）。この時すでにヘルトンは518打席を消化しており、もしその後欠場し続けていれば、59年ぶりの偉業が成し遂げられていた。だが、さすがに８月半ばとあってはそれもできず、最終的には.372に終わっている。

　ヘルトンほどではないが、08年のチッパー・ジョーンズ（ブレーブス）も４割にかなり近づいた一人だ。90年代半ばからブレーブスの中核を成したスウィッチヒッターはこの年、66試合時点まで４割を維持した（245打数98安打）。だが、その後は右足などに故障が頻発したためか、その後は徐々に打率が低下。最終的には.364に落ち着いたが、それでも初の首位打者に輝いた。

　　現役では23年のルイス・アライズ（当時マーリンズ）の４割挑戦が取りざたされたのが記憶に新しい。５月終了時点で打率.381をマークし、６月にはMLB公式サイトがアライズの打率を追う特設ページを開設したほどの注目ぶりだったが、こちらも４割を上回ったのは78試合時点が最後。後半戦は.314と勢いが落ちて、最終的には.354に終わった。

　このように、歴代の名打者でも跳ね返され続けてきた４割の壁は、ジャッジをもってしても至難の業と言わざるを得ない。しかし、だからこそ夢が膨らむという言い方もできる。規格外の打棒を振るうジャッジのバットに今後ますます注目が集まりそうだ。

構成●SLUGGER編集部

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