カブスの鈴木誠也は6月7日(現地)の土曜日、敵地デトロイトで行われたタイガース戦で今季3度目のマルチ本塁打を記録した。
【動画】今季3度目のマルチ弾! 鈴木誠也、今季15号・16号アーチを放つ
▼15号本塁打
打球初速:約169キロ 推定飛距離:約115メートル 打球角度:20°
▼16号本塁打
打球初速:約170キロ 推定飛距離:約120メートル 打球角度:29°
出場60試合目での16本塁打到達は、歴代日本人右打者の最多21本塁打を記録した昨季の85試合目を大きく上回るハイペースである。昨年は本塁打1本に24.38打数、6.9試合を費やしたことを考えれば、14.88打数、3.75試合の今季のペースはいわば「爆上がり」だ。
リーグトップを争っている打点についても、それは同じ。出場60試合での55打点到達は、メジャーリーグにおける自己最多74打点を記録した2023年の出場116試合での55打点到達を、やはり大幅に上回っている。
5月19日から25日までの1週間(6試合)、鈴木は打率.480(25打数12安打)、3本塁打、4二塁打、4四球、10打点、9得点でOPS(出塁率+長打率)1.552と爆発し、自身2度目の週間MVPに選出されているが、当時、シカゴの地元メディアの一人は「アメリカに来てから今がベストの状態だと思うか?」と問うている。
鈴木は答えた。「今がベストか、ベストじゃないかは分からない」。
「すごい選手が数多くいる中で、こういう賞をいただいたっていうのは、すごく嬉しいです。今のところはすごく良い状態なんで、あとは悪くなった時期にどう立て直すかっていうのを、もう1回いろいろ考えなきゃいけないので、そこはこれからも取り組んでいきたい」
慎重に聞こえるかも知れないが、彼は今季、すでに極度の不振に陥っている。
5月1日のパイレーツ戦であのポール・スキーンズからの9号アーチを含む2本塁打3打点でシーズン打率を.295とした翌日からスランプは始まった。2日から19日までの16試合で65打数10安打の打率.154、出塁率.183、長打率.308(OPS.491)と苦しみ、5月の月間打率は一時期、1割台にまで低迷した。
今はその「ミニ・スランプ」からリカバリーしている時期であり、5月20日から6月5日までの14試合では53打数19安打、打率.358、出塁率.444、長打率.679(OPS1.124)と持ち直して、5月の月間打率も.259まで回復したものの、その後は一進一退。決して打撃の調子が良いとは言えない。
鈴木は元々、メジャー移籍以来、5月と6月は月間打率2割台前半と、あまり良い成績を残してこなかった。その要因の一つは怪我で、1年目の22年は五月下旬に左薬指を傷め、2年目の23年はキャンプ中に左脇腹を傷めた。3年目の昨季は4月に右脇腹を痛め、それぞれ決して短くない期間、戦列を離れている。 今年も4月に右手首を痛めて数試合に欠場したし、活字にはなっていないものの、5月のある試合では右翼の守備中に下腹部に打球を当て、左足を上げると痛みを伴うような怪我をしている。それでも彼は同僚選手の怪我をカバーするため、普段の「指名打者」から「左翼」や「右翼」で強行出場し続け、今季最悪のスランプを乗り越えてしまったのだ。
「少しでも良くなりたいと思って、オフの間からいろいろ取り組んできた」と鈴木は言う。
「今も日々の試合で出た課題に取り組んで、全部が全部、上手く行ってるわけじゃないけど、データとかもいろいろチェックしながらやってますし、上がっている部分はあるので、やってきたことが間違ってはいないのかなとは思っている」
打撃について質問すると、「そんなの言わないに決まってるでしょ」と一蹴するし、「適当に振ったら、ホームランになった」などと言うのが常である。だが、彼の打撃にはどんな意味合いにおいても「適当」な部分はない。
あの日本人離れした「パワー」ばかりが強調されてしまうが、それも卓越した打撃技術があってのこと。相手投手の攻略法についても、さまざまなデータを活用して狙い球を絞ったり、配球を読んだりする能力に長けている。守秘義務のようなものがあるのであまり詳しくは書けないが、それはあたかも、難攻不落の敵陣地を陥落させるため、ゲーマーがさまざまな情報を元に最適解の攻略法を見つけるかの如く、である。
もちろん、頭脳=データ活用だけではなく、身体=普段のトレーニングや練習も重要で、前述のように彼はオフの間からさまざまな取り組みを続けている。たとえば1月の沖縄自主トレで、鈴木は執拗なぐらい、Barrel Zone=バレルゾーン(長打やヒットにつながりやすい打球速度と角度の組み合わせ)を意識した打撃練習を行っていた。
長短のバットを駆使し、最初は丁寧にバットの軌道を意識するだけ。力を入れて普通のバットを振るのはほんの少しで、あの強烈な打球を期待するこちらをもどかしくさせるほど、延々と続けていた。
「そんなに大きくない(ムーキー・)ベッツ(ドジャース)が、あの数字を残しているのって、やっぱりあのスウィングだと思うんですよ」
【動画】今季3度目のマルチ弾! 鈴木誠也、今季15号・16号アーチを放つ
▼15号本塁打
打球初速:約169キロ 推定飛距離:約115メートル 打球角度:20°
▼16号本塁打
打球初速:約170キロ 推定飛距離:約120メートル 打球角度:29°
出場60試合目での16本塁打到達は、歴代日本人右打者の最多21本塁打を記録した昨季の85試合目を大きく上回るハイペースである。昨年は本塁打1本に24.38打数、6.9試合を費やしたことを考えれば、14.88打数、3.75試合の今季のペースはいわば「爆上がり」だ。
リーグトップを争っている打点についても、それは同じ。出場60試合での55打点到達は、メジャーリーグにおける自己最多74打点を記録した2023年の出場116試合での55打点到達を、やはり大幅に上回っている。
5月19日から25日までの1週間(6試合)、鈴木は打率.480(25打数12安打)、3本塁打、4二塁打、4四球、10打点、9得点でOPS(出塁率+長打率)1.552と爆発し、自身2度目の週間MVPに選出されているが、当時、シカゴの地元メディアの一人は「アメリカに来てから今がベストの状態だと思うか?」と問うている。
鈴木は答えた。「今がベストか、ベストじゃないかは分からない」。
「すごい選手が数多くいる中で、こういう賞をいただいたっていうのは、すごく嬉しいです。今のところはすごく良い状態なんで、あとは悪くなった時期にどう立て直すかっていうのを、もう1回いろいろ考えなきゃいけないので、そこはこれからも取り組んでいきたい」
慎重に聞こえるかも知れないが、彼は今季、すでに極度の不振に陥っている。
5月1日のパイレーツ戦であのポール・スキーンズからの9号アーチを含む2本塁打3打点でシーズン打率を.295とした翌日からスランプは始まった。2日から19日までの16試合で65打数10安打の打率.154、出塁率.183、長打率.308(OPS.491)と苦しみ、5月の月間打率は一時期、1割台にまで低迷した。
今はその「ミニ・スランプ」からリカバリーしている時期であり、5月20日から6月5日までの14試合では53打数19安打、打率.358、出塁率.444、長打率.679(OPS1.124)と持ち直して、5月の月間打率も.259まで回復したものの、その後は一進一退。決して打撃の調子が良いとは言えない。
鈴木は元々、メジャー移籍以来、5月と6月は月間打率2割台前半と、あまり良い成績を残してこなかった。その要因の一つは怪我で、1年目の22年は五月下旬に左薬指を傷め、2年目の23年はキャンプ中に左脇腹を傷めた。3年目の昨季は4月に右脇腹を痛め、それぞれ決して短くない期間、戦列を離れている。 今年も4月に右手首を痛めて数試合に欠場したし、活字にはなっていないものの、5月のある試合では右翼の守備中に下腹部に打球を当て、左足を上げると痛みを伴うような怪我をしている。それでも彼は同僚選手の怪我をカバーするため、普段の「指名打者」から「左翼」や「右翼」で強行出場し続け、今季最悪のスランプを乗り越えてしまったのだ。
「少しでも良くなりたいと思って、オフの間からいろいろ取り組んできた」と鈴木は言う。
「今も日々の試合で出た課題に取り組んで、全部が全部、上手く行ってるわけじゃないけど、データとかもいろいろチェックしながらやってますし、上がっている部分はあるので、やってきたことが間違ってはいないのかなとは思っている」
打撃について質問すると、「そんなの言わないに決まってるでしょ」と一蹴するし、「適当に振ったら、ホームランになった」などと言うのが常である。だが、彼の打撃にはどんな意味合いにおいても「適当」な部分はない。
あの日本人離れした「パワー」ばかりが強調されてしまうが、それも卓越した打撃技術があってのこと。相手投手の攻略法についても、さまざまなデータを活用して狙い球を絞ったり、配球を読んだりする能力に長けている。守秘義務のようなものがあるのであまり詳しくは書けないが、それはあたかも、難攻不落の敵陣地を陥落させるため、ゲーマーがさまざまな情報を元に最適解の攻略法を見つけるかの如く、である。
もちろん、頭脳=データ活用だけではなく、身体=普段のトレーニングや練習も重要で、前述のように彼はオフの間からさまざまな取り組みを続けている。たとえば1月の沖縄自主トレで、鈴木は執拗なぐらい、Barrel Zone=バレルゾーン(長打やヒットにつながりやすい打球速度と角度の組み合わせ)を意識した打撃練習を行っていた。
長短のバットを駆使し、最初は丁寧にバットの軌道を意識するだけ。力を入れて普通のバットを振るのはほんの少しで、あの強烈な打球を期待するこちらをもどかしくさせるほど、延々と続けていた。
「そんなに大きくない(ムーキー・)ベッツ(ドジャース)が、あの数字を残しているのって、やっぱりあのスウィングだと思うんですよ」