私がスポーツライターという肩書きでちょっとは世の中に認められるようになったのは、1987年に『不思議の国のベースボール』(評伝社)、88年に『プロ野球の友』、90年に『プロ野球大辞典』(ともに新潮文庫)を上梓した頃からのことだった。
その頃に、突然1本の電話がかかってきた。
「もしもし、玉木さんですか? 水島と申しますが……」
そんな名前の友人はいなかったので、私が「どちらの水島さんですか?」と訊き返すと、「漫画家の水島新司です。ドカベンの水島ですよ」という声が返ってきた。
「えっ? 何で?」と驚きながらも嬉しかったのは事実だが、少々困ったのは自分があまり熱心な野球漫画の読者ではないことだった。
もちろん『ドカベン』は知っていた。『男どアホウ甲子園』も『野球狂の詩』も読んでいた。が、自分でコミックや漫画週刊誌を買ったことはなく、喫茶店に置いてある漫画雑誌を読む程度だった。
いや、熱心に野球漫画を読んだ時期はあったが、それは私が小学生の時だ。『少年サンデー』に連載された寺田ヒロオさんの『スポーツマン金太郎』と『少年マガジン』に連載されたちばてつやさんの『ちかいの魔球』は、どちらも雑誌の発売日になると、母親に50円玉をねだって買いに走った(近所に住んでいた同級生がマガジンを買い、私がサンデーを買って、読んだあと翌日に交換して小遣いを節約したものだった)。
しかし、中学生になる頃から漫画離れが始まり、熱心に読む漫画は『あしたのジョー』くらいになったのだった。しかも、その頃テレビ漫画としても大流行した『巨人の星』(梶原一騎・原作/川崎のぼる・絵)が私はどうも好きになれず、野球漫画から遠ざかっていた。
そんな個人的事情を話すと、水島さんは「いやいや、キミから野球漫画の話を聞きたいとは思ってないよ。キミの書いた野球の本が面白かったから、イロイロ野球の話を聞かせてもらおうと思ったんだ」と言う。後日、ホテルの喫茶室で2時間以上も野球をネタに楽しく談笑したのだった。
水島さんは、野球の話を……と言われたが、私は、成り行きで自然に「野球漫画の話」もしてしまった。
その頃に、突然1本の電話がかかってきた。
「もしもし、玉木さんですか? 水島と申しますが……」
そんな名前の友人はいなかったので、私が「どちらの水島さんですか?」と訊き返すと、「漫画家の水島新司です。ドカベンの水島ですよ」という声が返ってきた。
「えっ? 何で?」と驚きながらも嬉しかったのは事実だが、少々困ったのは自分があまり熱心な野球漫画の読者ではないことだった。
もちろん『ドカベン』は知っていた。『男どアホウ甲子園』も『野球狂の詩』も読んでいた。が、自分でコミックや漫画週刊誌を買ったことはなく、喫茶店に置いてある漫画雑誌を読む程度だった。
いや、熱心に野球漫画を読んだ時期はあったが、それは私が小学生の時だ。『少年サンデー』に連載された寺田ヒロオさんの『スポーツマン金太郎』と『少年マガジン』に連載されたちばてつやさんの『ちかいの魔球』は、どちらも雑誌の発売日になると、母親に50円玉をねだって買いに走った(近所に住んでいた同級生がマガジンを買い、私がサンデーを買って、読んだあと翌日に交換して小遣いを節約したものだった)。
しかし、中学生になる頃から漫画離れが始まり、熱心に読む漫画は『あしたのジョー』くらいになったのだった。しかも、その頃テレビ漫画としても大流行した『巨人の星』(梶原一騎・原作/川崎のぼる・絵)が私はどうも好きになれず、野球漫画から遠ざかっていた。
そんな個人的事情を話すと、水島さんは「いやいや、キミから野球漫画の話を聞きたいとは思ってないよ。キミの書いた野球の本が面白かったから、イロイロ野球の話を聞かせてもらおうと思ったんだ」と言う。後日、ホテルの喫茶室で2時間以上も野球をネタに楽しく談笑したのだった。
水島さんは、野球の話を……と言われたが、私は、成り行きで自然に「野球漫画の話」もしてしまった。
関連記事
- 【玉木正之のベースボール今昔物語:第15回】「それを作れば、彼らがやってくる」――アメリカ最高の野球映画『フィールド・オブ・ドリームス』の素晴らしさと“聖地”での思い出<SLUGGER>
- 【玉木正之のベースボール今昔物語:第14回】令和のファンにとっては「よく知らない人」なのか…日本のプロ野球を創り上げた長嶋茂雄を永遠に語り継ごう<SLUGGER>
- 【玉木正之のベースボール今昔物語:第13回】メジャーで球場が最も美しく見える客席は……リグリー・フィールドの外にあるビルの屋上だ!<SLUGGER>
- 【玉木正之のベースボール今昔物語:追悼・長嶋茂雄特別寄稿】日本野球史上最も素晴らしいベースボール・プレーヤーに聞き逃したこと<SLUGGER>
- 【玉木正之のベースボール今昔物語:第11回】アメリカへ行くならメジャーだけでなくマイナーも! 30年近く前に体感した「人生で一番楽しい場所」<SLUGGER>