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プロ野球

【玉木正之のベースボール今昔物語:第14回】令和のファンにとっては「よく知らない人」なのか…日本のプロ野球を創り上げた長嶋茂雄を永遠に語り継ごう<SLUGGER>

玉木正之

2025.07.03

“ミスタープロ野球”と呼ばれて人気を博した長嶋も、令和のファンにとっては今は昔なのか? (C)Getty Images

“ミスタープロ野球”と呼ばれて人気を博した長嶋も、令和のファンにとっては今は昔なのか? (C)Getty Images

 6月3日、長嶋茂雄さんが亡くなったというニュースをテレビの速報で知った時、まず私の頭に浮かんだのは、2013年の春に立教大学の教壇に立った時のことだった。

 私は2009年から毎年、大学院で夏休み期間中の集中講座を受け持ち、3~6人の少人数の院生を相手に「スポーツジャーナリズム論」の連続講義を行っていた。それが13年だけは大学1年生のクラスの授業も受け持ってほしいと依頼され、約50人の学生を相手に集中講義を行った。

 その中でインタビュー方法の講義があり、その題材として、長嶋さんにインタビューした際に準備した構成メモと録音テープの書き起こし原稿、それに実際に雑誌に掲載された完成原稿を紹介し、どのようにしてインタビューが記事として完成するのかを説明した。

 インタビュー記事は、1988年に雑誌『Number』に掲載されたもの。いきなり長嶋さんの三振の話題から始め、長嶋さんが美しい空振りをファンに見せるため「ヘルメットの飛ばし方」まで鏡の前で練習していたことや、三塁ゴロをさばいた時はワザと2~3歩華麗なステップを踏んでから一塁へ送球し、送球後も形を決めるなど(歌舞伎の所作から学んだという)、“長嶋茂雄的な魅せるプレー”について初めて長嶋さん自身が語った、我ながら画期的と思える自慢のインタビュー記事だった。

 たとえばその時、長嶋さんはこのような言葉を口にされていた。
 
「我々はプロですから、プロなら観客の皆さんに満足していただかなければならないわけで、だからバッティングの調子の悪い時はディフェンスで、守備でアピールする機会のない時はスチールやランで、とにかく観客の皆さんに喜んでいただこうと、そういう意識は、いずれプロに進む人間として学生時代から持っていました。(中略)ですから、純粋なアマチュア精神をお持ちの先生方からは、長嶋のプレイは派手すぎる。プロ野球選手のようだとよく叱られました」(拙著『定本・長嶋茂雄』文春文庫収録)

 このような長嶋さんの努力とスター性により、彼が立教大から巨人に入った58年以降、プロ野球は隆盛を迎えた。それまでは六大学野球の方が常に超満員だったが、東京の野球ファンは一斉に後楽園球場に移動したのだった。

 長嶋茂雄というベースボール・プレーヤーは、それくらい凄い人で……と私は講義を続けたのだったが……学生の反応がイマイチ悪い。

 長嶋さんが走る時は手の平の指をすべて広げ、腕を頭の上まで振って走ったとか、スライディングする時も両腕と両足を思いっきり広げてダイナミックに……などと話しても、学生たちはポカーンとした表情で、熱弁する私の顔をただ見つめている。
 
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