右肩インピジメント症候群で戦列を離れている佐々木朗希(ドジャース)が復帰へ向け、着々と歩を進めている。
デーブ・ロバーツ監督は14日(日本時間15日)に3Aでリハビリ登板することを明言。3イニングの予定で、そこから徐々にイニング数を増やし、5イニング投げられる目処が立ってからメジャーに復帰させる、というプランのようだ。
今季、まさに鳴り物入りで太平洋を渡った“令和の怪物”だが、1年目からメジャーの壁にぶつかった。
故障もさることながら、気になるのはその投球内容だ。カブスとの東京開幕シリーズでデビューを果たし、5月中旬にIL(故障者リスト)入りした時点で8試合に先発して防御率4.72。イニング数は34.1で、1先発平均にすると4回ちょっとでしかない。
投球分析家で、Xでのフォロワー数は50万人を超えるインフルエンサーでもある“ピッチングニンジャ”ことロブ・フリードマン氏はこの現状をどう捉えているのだろうか。彼がまず指摘したのは、精神面の話だった。
「佐々木が自分に大きなプレッシャーをかけていたことは間違いない。マイナーから昇格した投手にも、他の国からやってきた投手にもよく起こることだ。彼らは『メジャーの打者たちは間違いを犯さない』『パーフェクトに投げなければならない』と考える。でも、実際にはそんなことはない。佐々木の球にはメジャーの打者を打ち取るだけの力が十分あるんだから」
確かに、東京シリーズでのデビュー登板から、マウンド上での佐々木の表情は、自信に満ちあふれるというよりはどこか思いつめたような、悲壮感すら漂わせている印象があった。
それもあってか、実際の投球内容も、佐々木本来の持ち味を生かせないままでいる。
34.1イニングで奪三振はわずか24。9イニング平均では6.29で、日本時代の通算11.52と比べるとまるで別人のような数字だ。「別人のような数字」といえば被本塁打数もそうで、日本での最後の2年間は計202.0イニングで3本しか許していなかったのに、メジャーではたった34.1イニングで早くも6本献上している。
「多少のアップダウンはあると思っていたが、これほどまでとは予想していなかった」とフリードマン氏に聞くと、こんな答えが返ってきた。
「4シームの球速が98~102マイル出ていれば抑えられるだろうが、95~96マイルでは厳しい。今のメジャーリーグの打者にとっては、打撃練習のボールと同じだからね」 23年に平均159.1キロを計時していた佐々木の4シーム(ストレート)の球速は、昨季は156.0キロに急降下。メジャー1年目の今季はここまで96.0マイル(約154.5キロ)と、さらに低下している。このことがやはり“不振”の最大の要因と言えそうだ。
フリードマン氏は続けて以下のように指摘した。
「それにスプリッターもいまひとつだった。山本由伸は球速90~92マイルの“真のスプリットフィンガード・ファストボール”を投げる。一方、朗希のスプリッターは少し特殊で回転数が非常に少ない。それを補うには球速が必要になる。そうでなければ、打者はただ見送るだけだ。その意味では、球速の低下は朗希にとってとても大きな問題になる」
この指摘を裏付けるデータがある。今季、佐々木が相手打者にボールゾーンの球をスウィングさせた割合は21.3%で、これはメジャーで最も低い部類に入る。コントロールそのものが不安定であることも大きな要因だが、佐々木のスプリッターに相手打者がほとんど手を出していないことを示唆している。
ライブBPでは2シームやカット・ファストボールなどを試すなど新球習得に意欲を見せている佐々木だが、まずは4シームの球威・球速を取り戻すことが復活へのカギになりそうだ。
そうはいっても、まだ23歳。入団当時から「まだ未完成品であることが最大の魅力」とまで言われていたことを思えば、それほど悲観的になる必要もない。フリードマン氏自身、佐々木の将来性についての高評価は揺らいでいない。
「肉体的にも精神的にもアジャストしていかなければならないことは間違いない。ただ、彼にはそれができるだけの能力があるし、実際にアジャストしていくだろう。それに、ドジャースはそうする上で間違いなく最適のチームだ」
「周りには大谷翔平や山本、ブレイク・スネル、タイラー・グラスナウといった優れた投手たちがいる。デーブ・ロバーツ監督は素晴らしい指導者だし、マーク・プライアー、コナー・マクギニスは素晴らしい投手コーチだ。彼の周りには優れた人々がたくさんいる。このことはメジャーで成功する上で大きな助けになるはずだ」
渡米1年目で予想外の苦戦を強いられている佐々木。“怪物”のここからのリベンジに期待したい。
構成●SLUGGER編集部
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デーブ・ロバーツ監督は14日(日本時間15日)に3Aでリハビリ登板することを明言。3イニングの予定で、そこから徐々にイニング数を増やし、5イニング投げられる目処が立ってからメジャーに復帰させる、というプランのようだ。
今季、まさに鳴り物入りで太平洋を渡った“令和の怪物”だが、1年目からメジャーの壁にぶつかった。
故障もさることながら、気になるのはその投球内容だ。カブスとの東京開幕シリーズでデビューを果たし、5月中旬にIL(故障者リスト)入りした時点で8試合に先発して防御率4.72。イニング数は34.1で、1先発平均にすると4回ちょっとでしかない。
投球分析家で、Xでのフォロワー数は50万人を超えるインフルエンサーでもある“ピッチングニンジャ”ことロブ・フリードマン氏はこの現状をどう捉えているのだろうか。彼がまず指摘したのは、精神面の話だった。
「佐々木が自分に大きなプレッシャーをかけていたことは間違いない。マイナーから昇格した投手にも、他の国からやってきた投手にもよく起こることだ。彼らは『メジャーの打者たちは間違いを犯さない』『パーフェクトに投げなければならない』と考える。でも、実際にはそんなことはない。佐々木の球にはメジャーの打者を打ち取るだけの力が十分あるんだから」
確かに、東京シリーズでのデビュー登板から、マウンド上での佐々木の表情は、自信に満ちあふれるというよりはどこか思いつめたような、悲壮感すら漂わせている印象があった。
それもあってか、実際の投球内容も、佐々木本来の持ち味を生かせないままでいる。
34.1イニングで奪三振はわずか24。9イニング平均では6.29で、日本時代の通算11.52と比べるとまるで別人のような数字だ。「別人のような数字」といえば被本塁打数もそうで、日本での最後の2年間は計202.0イニングで3本しか許していなかったのに、メジャーではたった34.1イニングで早くも6本献上している。
「多少のアップダウンはあると思っていたが、これほどまでとは予想していなかった」とフリードマン氏に聞くと、こんな答えが返ってきた。
「4シームの球速が98~102マイル出ていれば抑えられるだろうが、95~96マイルでは厳しい。今のメジャーリーグの打者にとっては、打撃練習のボールと同じだからね」 23年に平均159.1キロを計時していた佐々木の4シーム(ストレート)の球速は、昨季は156.0キロに急降下。メジャー1年目の今季はここまで96.0マイル(約154.5キロ)と、さらに低下している。このことがやはり“不振”の最大の要因と言えそうだ。
フリードマン氏は続けて以下のように指摘した。
「それにスプリッターもいまひとつだった。山本由伸は球速90~92マイルの“真のスプリットフィンガード・ファストボール”を投げる。一方、朗希のスプリッターは少し特殊で回転数が非常に少ない。それを補うには球速が必要になる。そうでなければ、打者はただ見送るだけだ。その意味では、球速の低下は朗希にとってとても大きな問題になる」
この指摘を裏付けるデータがある。今季、佐々木が相手打者にボールゾーンの球をスウィングさせた割合は21.3%で、これはメジャーで最も低い部類に入る。コントロールそのものが不安定であることも大きな要因だが、佐々木のスプリッターに相手打者がほとんど手を出していないことを示唆している。
ライブBPでは2シームやカット・ファストボールなどを試すなど新球習得に意欲を見せている佐々木だが、まずは4シームの球威・球速を取り戻すことが復活へのカギになりそうだ。
そうはいっても、まだ23歳。入団当時から「まだ未完成品であることが最大の魅力」とまで言われていたことを思えば、それほど悲観的になる必要もない。フリードマン氏自身、佐々木の将来性についての高評価は揺らいでいない。
「肉体的にも精神的にもアジャストしていかなければならないことは間違いない。ただ、彼にはそれができるだけの能力があるし、実際にアジャストしていくだろう。それに、ドジャースはそうする上で間違いなく最適のチームだ」
「周りには大谷翔平や山本、ブレイク・スネル、タイラー・グラスナウといった優れた投手たちがいる。デーブ・ロバーツ監督は素晴らしい指導者だし、マーク・プライアー、コナー・マクギニスは素晴らしい投手コーチだ。彼の周りには優れた人々がたくさんいる。このことはメジャーで成功する上で大きな助けになるはずだ」
渡米1年目で予想外の苦戦を強いられている佐々木。“怪物”のここからのリベンジに期待したい。
構成●SLUGGER編集部
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