ドラフト会議は、未来ある若者の進路が決まる場である。それは指名があってもなくても同じだ。

　2025年は支配下73人、育成43人の計116人が指名を受けた。その中で中西聖輝（青山学院大）は1巡目の入札、全体の5番目で名前を呼ばれた。交渉権を獲得したのは中日ドラゴンズである。

　会見場となった青山学院大・青山キャンパス内「14号館12階 大会議室」は、受付前の段階で約30名ほどが列をなし、名古屋を本拠地とするテレビ局のクルーが複数見られた。スポーツ紙の事前予想で中日の1位予想は竹丸和幸（鷺宮製作所）と二分されるも、中西もやはり本命の一人に変わりはないと確信した。

　その結果が、上記の通り1位指名である。単独入札になったのは意外だったものの、いち早くプロへの道が開けたことは良かったのではないか。

　17時40分ごろから、横浜DeNAの1位指名を受けた小田康一郎とともに会見に対応。1時間にわたるロングランで、注目度の高さがうかがえた。

　会見ではドラゴンズや名古屋の印象、大学生活で学んだことなど、さまざまな質問に答えた中西。筆者からも「日米大学野球でチームメイトだった櫻井頼之介（東北福祉大）が2位指名を受けたこと」について聞かせてもらった。中西の答えはこうだ。

「ヨリに関しては、自分とはまったく別の性格と言いますか、物静かなタイプ。その中でも闘志があるタイプのピッチャーなので、自分も数多く学ぶことがあります。同じチームでやれるのは非常にワクワクして、ちょっと嬉しいです。切磋琢磨しながら、2人で高いレベルを目指してやっていければ」 　派手なガッツポーズで味方を鼓舞する中西に対し、櫻井は闘志を内に秘めるタイプのよう。大会中のキャッチボール相手だったこともあり、よく観察していたみたいだ。中日は高橋宏斗や金丸夢斗を筆頭に、20代前半～半ばの生きのいい投手が多い。近い将来の投手王国形成に中西、櫻井もきっと寄与してくれることだろう。

　会見終了後には、ドラフト会議の現場から井上一樹監督が駆けつけた。初対面で「手、大きいね！」と印象を語った指揮官に対し、中西は「期待に応えたい」と気が引き締まったよう。フォトセッションで肩を組んだ際には、「（身体が）熱いね！　こんなに汗かいてるのか！」とおどけた様子で語りかける井上監督が印象的だった。

　1年目の目標は「新人王」と語った中西。ただ、まずは「ちゃんとした戦力になることを前提に」と付け加えることを忘れなかった。高校、大学で日本一に輝いた"勝てる投手"は一歩一歩を確実に刻みながら、プロでも日本一の座をを勝ち取りにいく。

文●加賀一輝

【著者プロフィール】
かが・いっき。1988年3月6日、愛知県生まれ。2016年～23年まで『スポーツナビ』にて編集・編成を担当。在職中に五輪・パラリンピックへの派遣、『Number』『文春オンライン』等への寄稿を経験。現在は執筆・編集を主に活動する一方、DAZN初のリアリティーショー『THE ANNOUNCER ～スポーツ実況者オーディション～』に参戦中。趣味は草野球で、1週間で20イニング投げることも。

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