10月23日に行われるプロ野球ドラフト会議。1位指名が確実視されているのが立石正広(創価大)、石垣元気(健大高崎高)、中西聖輝(青山学院大)、竹丸和幸(鷺宮製作所)の4人だ。彼らは果たしてプロでどのような選手になっていくのだろうか。大学生投手で最も即戦力評価が高いと見られる中西の具体的な将来像を探ってみよう。
中西は智弁和歌山高3年時の2021年夏に甲子園で優勝投手になっているが、当時はそこまでプロ側の評価が高かったわけではない。実際、青山学院大進学後も2学年上に常広羽也斗(現広島)、下村海翔(現阪神)、松井大輔(現NTT西日本)という力のある投手が揃っていたこともあって、2年秋まではリーグ戦わずか4試合の登板に終わっている。3年春から先発の一角に定着し、同年秋に6勝をマークして最優秀投手とベストナインを受賞したが、まだこの頃は「1位指名確実」という声は聞かれなかった。
評価を大きく上げたのは最終学年になってからだ。まず大きく成長したのがストレート。3年秋までは140キロ台中盤程度だったが、今年に入ってからは常時140キロ台後半をマークするまでになった。数字だけでなく、ボールの質も明らかに向上している印象を受ける。ストレートの勢いが増したことによって、持ち味だった変化球がより生きるようになり、ピッチングに凄みが出てきた。昨年秋は56.2回を投げて53奪三振だったのが、25年春は70.1回で87奪三振と大幅に増えている。
多彩な球種を操る中西だが、軸となるのはストレートとフォークであり、この2つの精度が極めて高いことが、結果を残せる大きな要因である。そうなると、フォームは少し違うが、スタイルとしては吉見一起(元中日)が近い。
吉見もコーナーに投げ分ける高い制球力と、低めに確実に落とすフォークを武器に2度の最多勝に輝くなど中日のエースとして活躍した。晩年は怪我に苦しんだが、それでも通算90勝56敗と大きく勝ち越しているのは見事で、中西も同じように貯金を作れる投手になれるだけの能力は十分に秘めているだろう。
ただ、吉見に比べると少し重心が高いフォームで下半身の粘りがなく、ストレートが走らなくなった時には打ち込まれそうな懸念もある。球種が多いので、それなりの投球はできるかもしれないが、そうなるとどうしても貯金を作るのは難しくなりそうだ。ただ、それでも大舞台の経験も豊富なだけに、そこまで大きく勝ち越さなくても、毎年ある程度のイニング数を投げてゲームを作る上沢直之(ソフトバンク)のような先発投手になる可能性が高そうだ。
大学の先輩である常広、下村はプロ入り後に苦しんでいるが、大学4年時の安定感という意味ではこの2人を上回っているだけに、やはり即戦力としての期待は大きい。ストレートの勢いを維持して、プロでも貯金を作れる投手になってくれることを期待したい。
【将来像】
吉見一起(元中日)
上沢直之(ソフトバンク)
文●西尾典文
【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。
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評価を大きく上げたのは最終学年になってからだ。まず大きく成長したのがストレート。3年秋までは140キロ台中盤程度だったが、今年に入ってからは常時140キロ台後半をマークするまでになった。数字だけでなく、ボールの質も明らかに向上している印象を受ける。ストレートの勢いが増したことによって、持ち味だった変化球がより生きるようになり、ピッチングに凄みが出てきた。昨年秋は56.2回を投げて53奪三振だったのが、25年春は70.1回で87奪三振と大幅に増えている。
多彩な球種を操る中西だが、軸となるのはストレートとフォークであり、この2つの精度が極めて高いことが、結果を残せる大きな要因である。そうなると、フォームは少し違うが、スタイルとしては吉見一起(元中日)が近い。
吉見もコーナーに投げ分ける高い制球力と、低めに確実に落とすフォークを武器に2度の最多勝に輝くなど中日のエースとして活躍した。晩年は怪我に苦しんだが、それでも通算90勝56敗と大きく勝ち越しているのは見事で、中西も同じように貯金を作れる投手になれるだけの能力は十分に秘めているだろう。
ただ、吉見に比べると少し重心が高いフォームで下半身の粘りがなく、ストレートが走らなくなった時には打ち込まれそうな懸念もある。球種が多いので、それなりの投球はできるかもしれないが、そうなるとどうしても貯金を作るのは難しくなりそうだ。ただ、それでも大舞台の経験も豊富なだけに、そこまで大きく勝ち越さなくても、毎年ある程度のイニング数を投げてゲームを作る上沢直之(ソフトバンク)のような先発投手になる可能性が高そうだ。
大学の先輩である常広、下村はプロ入り後に苦しんでいるが、大学4年時の安定感という意味ではこの2人を上回っているだけに、やはり即戦力としての期待は大きい。ストレートの勢いを維持して、プロでも貯金を作れる投手になってくれることを期待したい。
【将来像】
吉見一起(元中日)
上沢直之(ソフトバンク)
文●西尾典文
【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。
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