プロ野球

長打だけじゃない! 首位攻防3連戦で見えてきた山賊打線の“もう一つの脅威”

氏原英明

2019.09.02

小技や俊足で相手をかき乱す源田は、破壊力抜群の山賊打線にあって“もう一つの脅威”となっている。(C)日刊スポーツ/朝日新聞社

 深みのある"天王山3連戦"だった。
 
 8月30日から、パ・リーグの首位・ソフトバンクと2位・西武による首位攻防戦3連戦が行われた。同節が始まる以前の両者のゲーム差はたったの2。この3連戦で何かが起こればペナントレースの趨勢は変わる。西武ナインにとっての高いモチベーションは、昨季のソフトバンクが同じ時期に抱えていたものと同じと言って良かった。

 昨季は、西武が返り討ちにしていた。9月15日からの3連戦、そのあとの27日からの3連戦で5勝1敗とソフトバンクを圧倒してリーグ優勝を確実なものとしたのだった。あれから約1年。シーズン序盤は出遅れていた西武が徐々に盛り返し、ついにソフトバンクの背中を捉える位置に来て、今節を迎えていた。

 8月30日の初戦、西武は4−2でソフトバンクを下した。昨季を想起させるような勝負強い打撃を見せ、ソフトバンクのエース・千賀滉大に土をつけての爽快な勝利だった。
 試合を決めたのは、7回裏、2死1塁から出た3番・森友哉の起死回生の勝ち越し決勝2ランだ。8以降、3番を務める機会が増えた森のチーム内での存在感は際立っているが、状態の良さをそのまま見せつけたような痛烈な一発だった。

 千賀のストレートを逆方向に柵越えできる技術力の高さは森の専売特許とも言えるが、このシーンには、辻監督が指揮官に就任してから見せている、西武打線のもう一つの脅威を感じずにはいられなかった。それこそ、昨季の天王山でソフトバンクを沈めた時を彷彿とさせるものだった。

 その脅威とは、2番を務める源田壮亮の足だ。

 まず、昨季の天王山のあるシーンを回想する。

 9月15日。1点リードの5回裏、西武は1死一、三塁と好機をつかみ、打席に浅村栄斗(現・楽天)を迎えていた。三塁走者は秋山翔吾、一塁走者は源田。相手投手は千賀だった。

 この時、源田に二盗させ、2点を狙いにいく攻め方が想像できた。源田の足に賭けて、一気に突き放そうという算段だ。

 しかし、源田は動かなかった。