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【MLB今日は何の日】20歳の“怪童”ウッドがデビュー5登板目にして1試合20奪三振の快挙達成!

出野哲也

2020.05.06

当時まだ20歳だったウッドがこの日見せた快投は「史上最高のピッチング」とも言われる。(C)Getty Images

 1986年4月29日にロジャー・クレメンスが1試合20三振を奪った日の観客は1万3414人に過ぎなかった。12年後の98年5月6日にケリー・ウッド(シカゴ・カブス)がこの記録に並んだ日も、観衆は1万5758人。普段のリグリー・フィールドよりずっと少なかった。意外なこのような日に限って大記録とは成し遂げられるのかもしれない。

 当時20歳、メジャー5試合目の登板だったウッドは、強打のヒューストン・アストロズを相手に初回から3者連続三振と最高の立ち上がりを見せた。2回二死まで5者連続、4回一死から再び5者連続三振で、5回終了時点で11個。速球は100マイルを超え、スライダーはまるで魔法にかけられたように大きく曲がり、クレイグ・ビジオやジェフ・バグウェルら、のちに殿堂入りする強打者たちでさえ手も足も出なかった。

 7回はバグウェル、ジャック・ハウエル、モイゼス・アルーをすべて空振り三振に斬って取り、8回も三者三振で18個。80年のビル・ガリクソン(モントリオール・エクスポズ)の新人記録に並び、同時に06年のジャック・フィースターが延長15回で達成したカブスの球団記録を更新した。
 
 9回表、先頭のビル・スパイアーはスライダーで空振り三振。これでナ・リーグタイ記録の19個となった。次打者のビジオは遊ゴロだったが、最後はデレク・ベルをこれまたスライダーで仕留め、クレメンスが2度記録した20三振に並んだ。しかも被安打1本の完封勝利。「これほどたくさん三振を奪えるなんて、誰にとっても凄いこと」とウッド本人は落ち着いたコメントだったが、ジム・リグルマン監督が「この場に立ち会えたことを誇りに思う」と語るなど、周囲の方が興奮気味だった。

 この年ウッドは13勝、リーグ3位の233奪三振で新人王を受賞した。だが、翌99年はトミー・ジョン手術で全休するなどその後は相次いで故障に見舞われ、通算成績は86勝75敗63セーブに終わった。クレメンスほどの大投手にはなれなかったが、「史上最高のピッチング」とも言われる1試合で永遠に球史に名を残した。

文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――"裏歴史の主人公たち"」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。

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