プロ野球

タイトルを獲得した若手右腕も…アマチュア野球ウォッチャー西尾典文が選ぶ「してやったり! 」スカウト以上に高く評価していた選手」

西尾典文

2020.05.25

昨年は防御率のタイトルを獲得し、プレミア12では侍ジャパンにも選ばれた山本。ドラフトでの指名順位は4位だった。写真:滝川敏之

 前回は、アマチュア時代は強い印象が残っていなかったにもかかわらずプロで大成功した、自分にとっては"痛恨"とも言える選手を紹介した。今回は逆にアマチュア時代はそれほど騒がれていなかったが、個人的には高く評価しており、その期待通りに一流となった"会心"と言える選手の例について紹介したいと思う。

 最近の選手でまず思い浮かぶのは山本由伸(オリックス)だ。そのプレーを見たのは2015年9月に行われた秋季宮崎県大会の対延岡学園高戦。左足を上げる動きは今よりも大きく、少し独特だったが、フォームの躍動感には素晴らしいものがあった。普通の高校生の場合、躍動感があると一方で無駄な動きも目立つものだが、山本はそういった問題が一切なかった。

 この日の最速は148キロをマークしたが、素晴らしかったのはストレートだけではない。110キロ台のカーブ、120キロ台後半のスライダーとツーシーム、130キロを超えるフォークとすべての変化球の質が高く、しっかり腕を振って投げることもできていた。フィールディング、クイックも上手く、当時のノートには「悪いところがない」と書いている。最高の誉め言葉である。あまり報じられていなかったが、4番を打つバッティングも一級品で、この日もスリーベース2本を含む3安打を放ち、まさに山本の独り舞台と言える試合だった。
 
 この年の高校生は今井達也(西武)、寺島成輝(ヤクルト)、藤平尚真(楽天)、高橋昂也(広島)がビッグ4と言われていたが、ある媒体でドラフト候補のランキングをつけた時には山本を彼らと同レベルに評価し、有力外れ1位候補と推した。プロ入り後の活躍を見ても、ある意味当然という気持ちである。

 山本は一度見てすぐに素材に惚れ込んだ選手だが、何度か見ているうちに徐々に良さが伝わってくる選手もいる。日本ハムで長く活躍し、現在は中日で投げている谷元圭介もそんな選手だ。初めてその投球を見たのは中部大の4年生だった2006年4月の対愛知工業大戦。3年生ながら、当時から評判だった長谷部康平(元楽天)との投げ合いを制し、被安打5、10奪三振で完封勝利をマークした。