チームを支えるのは何もスター選手だけではない。絶対的なレギュラーでなくとも、率先してベンチを盛り上げたり、どんな役割もこなす選手もまた、必要不可欠な存在だ。19日に開幕するプロ野球。異例のシーズンだからこそ、各チームの幹となる「縁の下の力持ち」に注目してほしい!
◆ ◆ ◆
衰え知らずのベテラン組に若手の成長も加わり、ソフトバンクの選手層はここ数年、さらに厚みを増してきている。対戦相手に勝つ前に、まずはチーム内のレギュラー争いに勝たなければならない。今年も新戦力の加入や怪我人の復帰により、その戦いはさらに激化。ぜいたくな悩みだが、首脳陣の開幕一軍選びも簡単にはいかないだろう。
実績は十分なのに、ベンチで待機せざる得ない選手も出てくる。長谷川勇也がその一人だ。2013年にリーグ最多安打と首位打者のタイトルを獲得、打率3割を3回マークするプロ14年目を迎える好打者も、ここ数年はベンチどころか二軍で過ごす時間も長くなっている。それでも、長谷川はソフトバンクにとって不可欠な存在だ。
去年はチーム事情もあり、打撃好調ながら一軍昇格の機会に見舞われない期間も長かった。それでも長谷川は腐ることなく、二軍戦で結果を残し続けた。51試合に出場して打率.365。長谷川からしたら、二軍での数字など気にも留めないかもしれない。しかし、どんな環境にあっても黙々とバットを振り込み、与えられた実戦の場で結果を出してくれる男に、首脳陣は絶大な信頼を寄せている。
昨季の一軍スタメン出場はわずか13試合。代打での起用も多かったが、限られたアピールの場でその存在感は遺憾なく発揮された。思い出すのはポストシーズンの活躍だ。西武とのCSファイナルステージ第1戦では同点打、同4戦では勝利を手繰り寄せるタイムリー、巨人との日本シリーズ第3戦では勝ち越しとなる犠飛を、いずれも代打で放っている。今年で36歳を迎えるベテランのバットは、衰えるどころかさらに磨きがかかっているように思う。
しかし、昨年12月の契約更改後の会見では、あのクールな打撃職人が悔しい二軍暮らしを思い返し、「心が折られた。もういいや、と一瞬なった……」と告白した。
そんな姿は微塵も感じさせなかったため、本当に驚いた。昨春のキャンプでは1日1000スウィング、昨オフの自主トレ期間中は誰よりも朝早くファーム施設に来ては一人黙々とバットを振り込んでいた。己に厳しい先輩は「若い選手に負けるとは、さらさら思ってない」「意識の高い若手がいない」と後輩にも発破を掛けてきた。
「あれだけ結果を残した人はこんなに練習するんだ……」。長谷川の背中は、確実に後輩たちを奮い立たせた。若手育成という意味でも、長谷川のチームへの貢献度は計り知れないものがある。
積み上げてきた確かな実績と誇り。どんな時も変わらず技術を磨き続け、活躍の場に備える。多くは語らずも静かに燃える長谷川は、“常勝ホークス”の今、そして未来にとっても欠かせない存在である。
取材・文●上杉あずさ(タレント)
【著者プロフィール】
ワタナベエンターテインメント所属。RKBラジオ「ホークス&スポーツ」パーソナリティやJ:COM九州「ガンガンホークス CHECK!GO!」リポーターとしてホークスを1軍から3軍まで取材。趣味はアマチュア野球観戦。草野球チーム「福岡ハードバンクポークス」の選手兼任監督を務める。
【ソフトバンクPHOTO】目指すは4年連続日本一!2020年のスローガンは「S15(サァイコー!)」
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衰え知らずのベテラン組に若手の成長も加わり、ソフトバンクの選手層はここ数年、さらに厚みを増してきている。対戦相手に勝つ前に、まずはチーム内のレギュラー争いに勝たなければならない。今年も新戦力の加入や怪我人の復帰により、その戦いはさらに激化。ぜいたくな悩みだが、首脳陣の開幕一軍選びも簡単にはいかないだろう。
実績は十分なのに、ベンチで待機せざる得ない選手も出てくる。長谷川勇也がその一人だ。2013年にリーグ最多安打と首位打者のタイトルを獲得、打率3割を3回マークするプロ14年目を迎える好打者も、ここ数年はベンチどころか二軍で過ごす時間も長くなっている。それでも、長谷川はソフトバンクにとって不可欠な存在だ。
去年はチーム事情もあり、打撃好調ながら一軍昇格の機会に見舞われない期間も長かった。それでも長谷川は腐ることなく、二軍戦で結果を残し続けた。51試合に出場して打率.365。長谷川からしたら、二軍での数字など気にも留めないかもしれない。しかし、どんな環境にあっても黙々とバットを振り込み、与えられた実戦の場で結果を出してくれる男に、首脳陣は絶大な信頼を寄せている。
昨季の一軍スタメン出場はわずか13試合。代打での起用も多かったが、限られたアピールの場でその存在感は遺憾なく発揮された。思い出すのはポストシーズンの活躍だ。西武とのCSファイナルステージ第1戦では同点打、同4戦では勝利を手繰り寄せるタイムリー、巨人との日本シリーズ第3戦では勝ち越しとなる犠飛を、いずれも代打で放っている。今年で36歳を迎えるベテランのバットは、衰えるどころかさらに磨きがかかっているように思う。
しかし、昨年12月の契約更改後の会見では、あのクールな打撃職人が悔しい二軍暮らしを思い返し、「心が折られた。もういいや、と一瞬なった……」と告白した。
そんな姿は微塵も感じさせなかったため、本当に驚いた。昨春のキャンプでは1日1000スウィング、昨オフの自主トレ期間中は誰よりも朝早くファーム施設に来ては一人黙々とバットを振り込んでいた。己に厳しい先輩は「若い選手に負けるとは、さらさら思ってない」「意識の高い若手がいない」と後輩にも発破を掛けてきた。
「あれだけ結果を残した人はこんなに練習するんだ……」。長谷川の背中は、確実に後輩たちを奮い立たせた。若手育成という意味でも、長谷川のチームへの貢献度は計り知れないものがある。
積み上げてきた確かな実績と誇り。どんな時も変わらず技術を磨き続け、活躍の場に備える。多くは語らずも静かに燃える長谷川は、“常勝ホークス”の今、そして未来にとっても欠かせない存在である。
取材・文●上杉あずさ(タレント)
【著者プロフィール】
ワタナベエンターテインメント所属。RKBラジオ「ホークス&スポーツ」パーソナリティやJ:COM九州「ガンガンホークス CHECK!GO!」リポーターとしてホークスを1軍から3軍まで取材。趣味はアマチュア野球観戦。草野球チーム「福岡ハードバンクポークス」の選手兼任監督を務める。
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