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プロ野球

甲子園登板ゼロ、大学4年間で1勝…梅津晃大はいかにして中日期待のエースになったのか?

西尾典文

2020.06.28

期待の本格派右腕・梅津はアマチュア時代を糧にプロで花開こうとしている。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

期待の本格派右腕・梅津はアマチュア時代を糧にプロで花開こうとしている。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

 球団ワーストの7年連続Bクラスと低迷期にある中日にあって、竜党から最も期待を寄せられているのがプロ2年目の梅津晃大だ。21日に行われた開幕3戦目のヤクルト戦では7回無失点3安打と素晴らしい快投を見せ、まさに期待に応えてみせた。

 ルーキーイヤーの昨季も球団史上2人目となるプロ初登板からの3連勝を記録した右腕だが、そのアマチュア時代は決して順風満帆だったわけではなかった。

 梅津は仙台育英高時代の2年春、背番号11でセンバツ出場を果たしたものの大会での登板はなく、夏の甲子園はベンチ外。新チームではエースとなったが、目立った結果を残すことはできなかった。そして東洋大進学後も、1年春からリーグ戦で登板するなど期待されていたものの、度重なる故障もあって4年春まで1勝もできず、最後のシーズンでようやくリーグ戦初勝利を飾ってドラフトを迎えることになった。

 しかし、これだけ確たる実績がなく、東洋大の同期には上茶谷大河(現・DeNA)、甲斐野央(現・ソフトバンク)という看板投手がいた中で、“150キロトリオ”の一角として注目を集め、またスカウトの間では「ポテンシャルの高さであれば梅津」という評価だったのだから、それだけの素質を感じさせる何かがあったのだ。
 
 筆者も3年秋のリリーフで1試合、4年時の春、秋にはいずれも先発で1試合ずつ梅津のピッチングを見たが、その3試合とも最速は150キロを超えており、勝ち投手は逃したものの強いインパクトを残している。特に4年春の開幕2戦目の中央大戦は、前日に上茶谷が16奪三振完封という圧巻の投球を見せた後だったが、そのピッチングと比較しても梅津の方がボールの迫力は、明らかに上だったことをはっきりと覚えている。

 ただ、大学時代までは良いボールと悪いボールの差が大きいという印象が強かった。初めてシーズンを通じて投げることができた4年秋のシーズンでも、5度先発して6イニングを投げ切ったのは2度しかなく、初勝利もリリーフでマークしたものだった。

 そこからプロで試合を作れるようになったのは、スライダーとフォークの精度が目に見えて向上しているからだろう。21日のヤクルト戦で奪った5つの三振のうち、スライダーが2個、フォークで3個奪三振を記録している。また、7イニングで3回も先頭打者に出塁を許したが、すべて併殺(1つは三振と盗塁失敗)で切り抜けており、走者を背負ってからの投球にも安定感が出てきている。もちろん、ストレートが走ってこその変化球であり、この日は最速152キロを計測するなど、ピンチの場面では球威で押すことができるのも強みだ。

 梅津は長い雌伏の時期を経て、プロで大きく羽ばたこうとしている。しかし彼の潜在能力を考えると、まだまだ開花しているのは半分程度にも見える。次回以降の登板で、さらに一皮むけるのか。ドラゴンズファンだけでなく、すべての野球ファンを魅了するだけの実力を持っているのは間違いない。

取材・文●西尾典文
【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材し、全国の現場に足を運んでいる。ドラフト、アマチュア野球情報サイト「PABBlab」を今年8月にリリースして多くの選手やデータを発信している。

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