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【担当記者が見た大谷翔平】伝説の強打者プーホルスとの時間は大谷にとって大きな財産

斎藤庸裕

2020.06.25

史上4人目の通算3000安打&600本塁打を達成したプーホルスは大谷にとっての憧れの存在だ。(C)Getty Images

「オオタニサン!」。昨年5月下旬の試合後、大谷翔平の囲み取材中に突然、後方でひときわ大きな叫び声が響いた。大谷は思わず「びっくりしたぁ」と苦笑い。声の主はベテランのアルバート・プーホルスだった。ドッキリに成功したからか、プーホルスはニヤリと満足そうな顔を浮かべ、クラブハウスを後にした。

 これまでMVPを3度受賞するなど史上有数の強打者として活躍を続けてきたプーホルス。通算656本塁打は歴代6位、2075打点は4位タイ、3202安打はアメリカ国外出身選手では歴代最多で、将来の野球殿堂入りが確実視されている。

 通算3000安打に到達したのは18年5月4日のマリナーズ戦。その時、大谷はネクストバッターズサークルで快挙達成を目に焼き付けていた。「歴史的な瞬間を間近で見られて、一生自慢すると思います」とうれしそうだった。

 今季メジャー20年目を迎えるレジェンドとの時間は、大谷にとって大きな財産でもある。「毎日毎日、何かしらの記録を塗り替えている、それくらい素晴らしい選手。それでも毎日、人よりも練習を重ねていて、見てて勉強になるというか、手本になる」。
 
 今年の春季キャンプで、大谷は右足を少し上げてタイミングを取る新たな打撃フォームを試した。「同じ打ち方で3年、5年、10年、打ち続けるっていうのはないと思う。トップの選手でも、もっともっと良くなるためにいろいろ変えて、毎日練習している」。プーホルスの打撃練習を見ていて、変化に気付くことも多々ある。一方で、プーホルスも「本当によくバットを振っているね。脱帽するよ」と大谷を称える。

 フィールド外でも、ダウン症患者の支援や人身売買撲滅キャンペーンに協力するなど社会貢献活動に積極的なプーホルス。6月18日には、母国ドミニカ共和国で一時帰休となっている球団スタッフに対し、約1900万円を提供すると報じられた。

 周囲を気遣い、チームの和を重んじる。冒頭のいたずらも、緊張感の漂う取材環境をリラックスさせたかったという思いがあったのだろう。チームとの10年契約は来年限りで切れるが、残された期間、ベテラン強打者と二刀流大谷の競演に注目したい。

文●斎藤庸裕

【著者プロフィール】
さいとう・のぶひろ。1983年、埼玉県生まれ。日刊スポーツ新聞社でプロ野球担当記者を務めた後サンディエゴ州立大学でスポーツビジネスを学ぶ。2018年から大谷翔平の担当記者を務める。日刊スポーツでコラム「ノブ斎藤のfrom U.S.A」を配信中。

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