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【2020MLB注目のスターたち】大谷翔平――アメリカ人記者も魅了される唯一無二のGREATEST “SHO” MAN

JP・フーンストラ

2020.07.25

今シーズン、2年ぶりに“二刀流”の大谷が帰ってくる。これを待ち望んでいたのは、何も日本のファンばかりではない。写真:Getty Images

 私は大谷翔平(エンジェルス)が質問に答える際の振る舞いを称賛したい。

「メジャーリーグではこの100年で初の、本格的な二刀流選手としてプレーするのは、どんな気持ちですか?」という質問にあまりバリエーションはない。彼はこの質問をすでにさまざまな形で耳にしている。投手としてマウンドに復帰する今季、さらにその数は増えることだろう。

 この問いを投げかけられた大谷は、あきれた表情をすることもなければ、前もって準備していたように回答することもない。礼儀正しく記者の目をしっかり見つめ、律儀に答えを返してから、次の質問に移る。まるでその質問をする記者の好奇心が、次の記者と同じくらい妥当なものであるかのように。

 これは大谷が北海道からアナハイムに持ち込んだ神秘性の一つと言っていいだろう。彼は自分がベーブ・ルースと比較される稀有な存在であることに、居心地の悪さを感じていないように見受けられる。25歳の大谷は現在、地球上で最高の投手の一人であると同時に、最高の打者の一人でもある。傲慢になってもおかしくないほどの才能を持っているにもかかわらず、彼は礼儀正しさを失っていない。
 
 私は、大谷が自らの技術を高めようと練習に励む姿を称賛したい。

 一昨年、大谷はトロントのロジャース・センターでの打撃練習で、5階席に飛び込む超特大アーチを放った。デンバーのクアーズ・フィールドでは飛距離517フィート(約157.6m)の当たりを、5月18日の本拠地アナハイムの試合前には、ライトのスコアボードを直撃する513フィート(約156.3m)の一撃を放った。一瞬ボールが視界から消え、黒いスコアボードを背景に再び現れる様子を間近で見ていた私にとっては、513フィートという数字は控えめすぎる気がした。

 エンジェルスの球団職員は私に、ホームプレートからスコアボードまでの正確な距離はすぐには分からないと言った。なぜなら、それまで誰もそこに打ち込んだことはなかったからだ。スコアボードが設置されたのは1998年。もう20年以上も前のことだ。その日、私は打撃練習での特大アーチについて大谷に尋ねた。「自分にとって一番飛んだ当たりだったかどうかは分かりません」。通訳を介して彼は言った。

「でも、ああいう打球が打てるということは、自分の打撃があらゆる点で進化していることなのかなと思います」。

 NBAの元スーパースター、アレン・アイバーソンは、2002年の記者会見で2分間にわたって練習の無意味さをまくしたてたことで知られる。彼は記者の質問に答える前に、何と22回も「練習」という言葉を繰り返した。もし大谷が打撃練習を軽視したとしても、アメリカではそれを責める者はいないだろう。しかし、大谷はアイバーソンとは違い、自分をスーパースターだとは思っていない。彼は自らの技術を高めようと努力を重ねる求道者なのだ。