MLB

【ナショナルズの「未来予想図」】昨季の世界一チームはマイナーの層に不安が。舵取りを誤れば一気に低迷期へ突入するかも

城ノ井道人

2020.07.27

昨オフ、打線の軸だったレンドーンはFAで退団したものの、投手陣の軸であるストラスバーグ(写真)とは再契約に成功した。(C)Getty Images

 昨季は開幕19勝31敗からの巻き返しに成功し、ワイルドカードでポストシーズンに進出。数々の逆転劇で悲願のワールドチャンピオンを勝ち取った。生え抜きスーパースターのブライス・ハーパーがFAでフィリーズに流出し、3年ぶりにぜいたく税の対象から外れた年に世界一達成という皮肉な結果だったが、本格的な戦力減退が始まる前に勝ち切ったという点で、これ以上ない最高のタイミングだった。

 オフはスティーブン・ストラスバーグとアンソニー・レンドーンという投打の柱を含め、ワールドシリーズのロースターに入った25人のうち実に10人(!)がFA。ストラスバーグ、レンドーン両方と再契約することが不可能な状況で、これまでも先発投手重視の戦力構築を行ってきたリゾーGMは前者を選択、投手歴代2位の7年2億4500万ドルで引き留めた。

 レンドーンがエンジェルスに去った穴埋めにジョシュ・ドナルドソンを狙うも、マイク・リゾーGMの想定以上の高値が付いて獲得に失敗。結局はライアン・ジマーマン(今季はプレーしないことを選択。来オフ再びFAとなる)、アスドゥルバル・カブレラ、ハウィ・ケンドリック、スターリン・カストロ、エリック・セームズと、再契約組を含めて短期契約のベテランをかき集めて戦力維持を図ることとなった。
 
 とりあえず、マックス・シャーザーの契約最終年である21年までは引き続き勝負モードを継続する可能性が高い。現段階でぜいたく税ラインまで1400万ドルほどの余裕があり、勝負の目があればシーズン中の大型補強という線も残っている。

 ただ、マイナー組織の層は決して厚くはない。野手はホアン・ソト、ビクター・ロブレスに加え、正三塁手の座を狙うカーター・キーブーム、投手は大型長期契約を交わしたストラスバーグとパトリック・コービンが今後のチームを牽引していく。24年には35歳のストラスバーグ、34歳のコービンに計7000万ドルを支払うことがすでに決まっている。2人ともトミー・ジョン手術経験者であることを考えるとかなり怖い状況で、それまでにソトを長期契約でがっちり囲い込んだ上で、エース級の投手を育成しておきたい。これに失敗すると、一気に低迷期へ突入することも考えられる。

文●城ノ井道人

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