プロ野球

巨人が優勝に“王手”。原監督の執念の継投が光った。山口俊が最多勝を確実にする15勝目

氏原英明

2019.09.21

巨人が優勝に王手。7回に4人をつぎ込んだ継投に、原監督のこの試合に懸ける執念を見た。提供:

 プロ野球ペナントレースは20日、セ・リーグの首位・巨人が一発攻勢で9−4でDeNAを下し、マジックを「2」として優勝へ王手をかけた。

 点差ほどの快勝ではなかった。
 しかし、流れ読み切った試合運びのうまさで、巨人が逃げ切った試合だった。

 試合は、巨人が山口俊、DeNAは平良拳太郎が先発。FAでDeNAから移籍した山口、その人的補償として交換で移った平良という因縁の対決は、両者とも立ち上がりに2点を失うスタートとなった。

 巨人は坂本勇人が1回表、一塁に安打で出塁の亀井義行を置いて、バックスクリーン左に先制の2点本塁打を放った。DeNAも負けじとその裏、山口が制球難に苦しんだところに漬け込み、1死満塁の好機をつかむと、ロペスの右翼前適時打と宮﨑敏郎が四球を選んで押し出しと2点取り返す。

 すぐに同点となったが、巨人はそこから地力を見せる。2回に亀井の適時打で1点を勝ち越すと、3回は大城卓三の右翼本塁打でさらに1点。6回には重信慎之介がソロ本塁打。7回には岡本和真の適時打と代打・阿部慎之助の適時打で2点を挙げて、ジリジリとDeNAを突き放していった。
 それでも粘るDeNAは7回裏、2死1、2塁から大和が右翼への2点適時打を放って3点差。なおも2死満塁で、打席には前日の広島戦でサヨナラ3ランを放ったソトを迎えた。

 しかし巨人は、この回4人目の投手に澤村拓一を送ると、澤村は見事ベンチの期待に応え、完璧なスプリットでソトを三振に打ち取り、試合を決定的なものにした。

 9回には坂本、岡本のソロ本塁打が出て5点差とした巨人が、天王山を制した。

 7回の攻防には見応えがあった。
 巨人は、立ち上がりに2点ずつを取り合うという中、着実に得点を挙げていったが、7回表は、岡本が適時打を打った後、ホームランを打っている大城に代打・阿部を送っている。この好機で阿部がしっかり結果を出した。

 一方、その裏、山口が2点を失いなおピンチを作ると、小刻みな投手起用リレーを見せた。山口から大竹寛、中川皓太を挟んで、最後は澤村だった。リリーフを3人もつぎ込むイニングになったが、それほど、このイニングの重要性を感じていたからに他ならなかったからだろう。

 最後はホームランで試合がひっくり返るという場面の中、澤村がソトを一殺したのはこの試合のハイライトといってもよかった。

 阿部という勝負手を打って得点差を広げ、3人のリリーフを使ってでも抑えにかかった。この回は先頭の亀井が二塁打で出塁のあと、2番の坂本がセーフティ気味の送りバントを決めているが、そうした姿勢も、大事なイニングと位置付けた巨人の試合巧者ぶりが発揮されたと言えるだろう。
 
 原監督は勝因に7回の攻防を挙げ、こう振り返っている。

「点差は開きましたけど、非常に緊張感のあるゲームでした。7回の坂本のバントは、どうしても1点を取りたいというところでの作戦でした。あそこで追加点を取れたのが大きかった。1点ではなく2点も取れた。そしてその裏は、1イニングに3人の投手を起用するのは本意ではないんですけど、澤村がよくソトを打ち取ってくれた」

 巨人はこれで優勝への王手をかけ、明日のDeNAに勝てば、リーグ優勝が決まる。

 ほぼ優勝は決まったようなものだが、どういった試合運びをするかは注目したい。この先のプレーオフを考えた時に、DeNAが雪辱を喫してくると厄介な相手になるかもしれない。今日の試合はうまく制したが、前日の試合で7点差をひっくり返すなど、DeNAは乗せると怖いチーム力がある。ただ「勝利」するだけでなく、「いかにして勝つか」という戦い方も注目ポイントだ。

文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。