2020年のナ・リーグを制したドジャースは、リーグ優勝決定シリーズ第3戦の1回表に11点を挙げ、ポストシーズンの1イニング最多得点記録を塗り替えた。だが、この試合でブレーブスでのクリスチャン・パチェも、レコードブックに名前を刻む活躍を見せた。メジャー初本塁打をポストシーズンで記録した史上7人目の選手としてだ。
過去の6人は、ロージー・ライアン(1924年のワールドシリーズ)、フランク・デマリー(32年のワールドシリーズ)、ミッキー・ロリッチ(68年のワールドシリーズ)、ドン・ガレット(75年のリーグ優勝決定シリーズ)、メルビン・モーラ(99年のリーグ優勝決定シリーズ)、ジョー・ブラントン(2008年のワールドシリーズ)だ。彼らはいずれもメジャーで9年以上プレーしたが、通算本塁打が2ケタに達したのはデマリー(72本)とモーラ(171本)しかいない。それもそのはず、他の4人は野手ではなく投手だったためだ。
4人の投手のうち、ロリッチ、ガレット、ブラントンの3人はレギュラーシーズンとポストシーズンを合わせて通算1本塁打に終わった。ライアンも2本塁打だ。ただ、4人とも通算50勝以上。中でも、ロリッチはレギュラーシーズンの通算217勝に加え、68年のワールドシリーズでは3先発して3完投で3勝を挙げ、シリーズMVPに選ばれた。また、第2戦は本塁打だけでなく単打も放ち、さらに押し出し四球で2打点目も記録した。
今回、記録を達成したパチェは21歳の外野手だ。メジャーデビューは今年8月で、レギュラーシーズンの出場はデビュー戦とその翌日の2試合のみで、成績は単打1本の4打数1安打だった。ワイルドカード・シリーズと地区シリーズもロースターに入っていたが、出場はすべて守備固めで打席はなし。リーグ優勝決定シリーズ第1戦にアダム・デュバルが故障したことで、その後は「9番・センター」として起用された。
ほぼ皆無の実績でポストシーズンのロースターに入ったことと当初の起用からもわかるとおり、パチェは守備に優れたトップ・プロスペクトである。守備力だけでなくスピードも持ち合わせており、課題だった打撃も年々向上している。ブレーブスのセンターと言えば、98~07年に10年続けてゴールドグラブを受賞し、05年には51本塁打&128打点で二冠王に輝いたアンドリュー・ジョーンズ(後に楽天でもプレー)が有名だが、パチェもジョーンズのように長きにわたってセンターを守ることが期待されている。
また、この2人は師弟関係にある。現在、ブレーブスで特別アシスタントを務めるジョーンズは、パチェにアドバイスを与えている。ジョーンズがブレーブスで使用していた背番号25はタイラー・フラワーズが使っているため、パチェは背番号14でプレーしているが、今年のスプリング・トレーニングで希望していたとおり、将来的には25に変えると思われる。果たして師匠の実績にどこまで迫れるかに注目だ。
文●宇根夏樹
【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。
【PHOTO】スター選手が勢ぞろい! 2020MLBプレーヤーランキングTOP30
過去の6人は、ロージー・ライアン(1924年のワールドシリーズ)、フランク・デマリー(32年のワールドシリーズ)、ミッキー・ロリッチ(68年のワールドシリーズ)、ドン・ガレット(75年のリーグ優勝決定シリーズ)、メルビン・モーラ(99年のリーグ優勝決定シリーズ)、ジョー・ブラントン(2008年のワールドシリーズ)だ。彼らはいずれもメジャーで9年以上プレーしたが、通算本塁打が2ケタに達したのはデマリー(72本)とモーラ(171本)しかいない。それもそのはず、他の4人は野手ではなく投手だったためだ。
4人の投手のうち、ロリッチ、ガレット、ブラントンの3人はレギュラーシーズンとポストシーズンを合わせて通算1本塁打に終わった。ライアンも2本塁打だ。ただ、4人とも通算50勝以上。中でも、ロリッチはレギュラーシーズンの通算217勝に加え、68年のワールドシリーズでは3先発して3完投で3勝を挙げ、シリーズMVPに選ばれた。また、第2戦は本塁打だけでなく単打も放ち、さらに押し出し四球で2打点目も記録した。
今回、記録を達成したパチェは21歳の外野手だ。メジャーデビューは今年8月で、レギュラーシーズンの出場はデビュー戦とその翌日の2試合のみで、成績は単打1本の4打数1安打だった。ワイルドカード・シリーズと地区シリーズもロースターに入っていたが、出場はすべて守備固めで打席はなし。リーグ優勝決定シリーズ第1戦にアダム・デュバルが故障したことで、その後は「9番・センター」として起用された。
ほぼ皆無の実績でポストシーズンのロースターに入ったことと当初の起用からもわかるとおり、パチェは守備に優れたトップ・プロスペクトである。守備力だけでなくスピードも持ち合わせており、課題だった打撃も年々向上している。ブレーブスのセンターと言えば、98~07年に10年続けてゴールドグラブを受賞し、05年には51本塁打&128打点で二冠王に輝いたアンドリュー・ジョーンズ(後に楽天でもプレー)が有名だが、パチェもジョーンズのように長きにわたってセンターを守ることが期待されている。
また、この2人は師弟関係にある。現在、ブレーブスで特別アシスタントを務めるジョーンズは、パチェにアドバイスを与えている。ジョーンズがブレーブスで使用していた背番号25はタイラー・フラワーズが使っているため、パチェは背番号14でプレーしているが、今年のスプリング・トレーニングで希望していたとおり、将来的には25に変えると思われる。果たして師匠の実績にどこまで迫れるかに注目だ。
文●宇根夏樹
【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。
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