侍ジャパンの“代走のスペシャリスト”が球史に名前を刻んだ。
福岡ソフトバンクの周東佑京が29日、本拠地で行われた千葉ロッテ戦の初回に二塁盗塁を成功させ、12試合連続盗塁を記録。1971、74年の福本豊のプロ野球記録を46年ぶりに更新したのだ。「1番・二塁」で先発出場した周東は二塁内野安打で出塁すると、続く打者の2球目にスタートを切り、盗塁を警戒していたロッテバッテリーをまったく寄せ付けないスピードで二塁を陥れた。
周東といえば、昨年に初めて支配下登録された中で抜群のスピードを誇り、プレミア12の侍ジャパンに「代走要員」として招集され、その足で各国を震撼させた。今季序盤は昨年に引き続き守備・代走要員だったものの、“意外な打撃”でスタメンの座を勝ち取り、9月中旬以降はリードオフとして見事な活躍を見せている。
確かに周東の一番の武器は、球界屈指のスピードであることに間違いはない。ぼてぼての打球を内野安打に変え、少しでも外野守備がもたつけば三塁まで進むことができる。しかし一つ見落としていけないのは、周東は「打撃で結果を残している」ことである。
今季最初の48試合では12盗塁、そして29日までの同じ48試合で盗塁数は35と一気に増えている。それはなぜか。打撃成績を見比べると分かりやすい。前半は116打数22安打、打率.208、出塁率.258とおおよそ一軍選手の中でもワーストレベルの数字だったのが、後半では173打数53安打、打率.306、出塁率.358と、十分にレギュラー足り得る結果を残しているのだ。
そして、今回のプロ野球記録が生まれるまでの12試合を見ると、打率.320(50打数16安打)、出塁率.382とバットが振れている。振り返れば、不滅のシーズン106盗塁の記録を持ち、周東に連続試合盗塁の記録を抜かれた福本もこう言っている。
「盗塁の秘訣は、塁にでること」
いくらスピードがあるからといっても、出塁できなければ盗塁する機会すら得られない。そして、出塁も期待できない程度の打力の選手を、例えば多くの打席が回る打順上位に置くことは統計学的にも“愚策”である。その穴にはまってしまうと、目先の利益=盗塁数を稼ぐことにはつながるかもしれないが、本来の目的である得点力が減退する可能性も秘めている。
そして今回、周東が大記録を達成できたのも、結局は“盗塁の神”のお言葉通り、「塁に出ること」ができているからだ。
周東は昨オフ、一軍1年目に打率.196、OPS.506に終わった自らの打撃を「ふがいない」と笑い、「足だけの男と言われたくない」からと猛練習を積んできた。そしてその成果がフルに発揮されたことで、出塁=盗塁の機会を増やすことだがきたわけだ。
今回の大記録達成はもちろん、彼をプロに押し上げた脚という天性の才能が大きく起因しているのは確かである。しかし同時に、自らの課題と向き合い、“一人前のレギュラー”に恥じないレベルにまでバッティング能力を高められたのも、また事実だ。
構成●SLUGGER編集部
福岡ソフトバンクの周東佑京が29日、本拠地で行われた千葉ロッテ戦の初回に二塁盗塁を成功させ、12試合連続盗塁を記録。1971、74年の福本豊のプロ野球記録を46年ぶりに更新したのだ。「1番・二塁」で先発出場した周東は二塁内野安打で出塁すると、続く打者の2球目にスタートを切り、盗塁を警戒していたロッテバッテリーをまったく寄せ付けないスピードで二塁を陥れた。
周東といえば、昨年に初めて支配下登録された中で抜群のスピードを誇り、プレミア12の侍ジャパンに「代走要員」として招集され、その足で各国を震撼させた。今季序盤は昨年に引き続き守備・代走要員だったものの、“意外な打撃”でスタメンの座を勝ち取り、9月中旬以降はリードオフとして見事な活躍を見せている。
確かに周東の一番の武器は、球界屈指のスピードであることに間違いはない。ぼてぼての打球を内野安打に変え、少しでも外野守備がもたつけば三塁まで進むことができる。しかし一つ見落としていけないのは、周東は「打撃で結果を残している」ことである。
今季最初の48試合では12盗塁、そして29日までの同じ48試合で盗塁数は35と一気に増えている。それはなぜか。打撃成績を見比べると分かりやすい。前半は116打数22安打、打率.208、出塁率.258とおおよそ一軍選手の中でもワーストレベルの数字だったのが、後半では173打数53安打、打率.306、出塁率.358と、十分にレギュラー足り得る結果を残しているのだ。
そして、今回のプロ野球記録が生まれるまでの12試合を見ると、打率.320(50打数16安打)、出塁率.382とバットが振れている。振り返れば、不滅のシーズン106盗塁の記録を持ち、周東に連続試合盗塁の記録を抜かれた福本もこう言っている。
「盗塁の秘訣は、塁にでること」
いくらスピードがあるからといっても、出塁できなければ盗塁する機会すら得られない。そして、出塁も期待できない程度の打力の選手を、例えば多くの打席が回る打順上位に置くことは統計学的にも“愚策”である。その穴にはまってしまうと、目先の利益=盗塁数を稼ぐことにはつながるかもしれないが、本来の目的である得点力が減退する可能性も秘めている。
そして今回、周東が大記録を達成できたのも、結局は“盗塁の神”のお言葉通り、「塁に出ること」ができているからだ。
周東は昨オフ、一軍1年目に打率.196、OPS.506に終わった自らの打撃を「ふがいない」と笑い、「足だけの男と言われたくない」からと猛練習を積んできた。そしてその成果がフルに発揮されたことで、出塁=盗塁の機会を増やすことだがきたわけだ。
今回の大記録達成はもちろん、彼をプロに押し上げた脚という天性の才能が大きく起因しているのは確かである。しかし同時に、自らの課題と向き合い、“一人前のレギュラー”に恥じないレベルにまでバッティング能力を高められたのも、また事実だ。
構成●SLUGGER編集部