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ダルビッシュはサイ・ヤング賞2度目の2位。1位に選出した記者の理由は「対戦相手の質を考慮して」

SLUGGER編集部

2020.11.12

ダルビッシュはサイ・ヤング賞2度目の2位。1位に投票した記者の理由とは? 写真:田口有史

 メジャーリーグは現地時間11日、最優秀投手に贈られるサイ・ヤング賞を発表。日本からはナ・リーグでダルビッシュ有(シカゴ・カブス)、ア・リーグでは前田健太(ミネソタ・ツインズ)が最終候補3人に入っていたが、ダルビッシュは2位、前田も2位で受賞を逃した。

 前田に関しては勝利・防御率・奪三振の投手三冠王シェーン・ビーバー(クリーブランド・インディアンス)がいたため、最初から受賞の可能性は限りなく低かったが、ダルビッシュは別だ。ナ・リーグでは最多勝のダルビッシュ、最優秀防御率のトレバー・バウアー(シンシナティ・レッズ)、最多奪三振のジェイコブ・デグロム(ニューヨーク・メッツ)は、タイトル以外の指標面も実力伯仲とあり、予想が難しいとされていた。

 果たして結果は、バウアーの"圧勝"。30個ある1位票のうち27を獲得して初受賞を果たした。ダルビッシュは1位票の残り3つが入り、2位票が24。テキサス・レンジャーズ時代の2013年以来2度目の2位という形に終わった。では、「ダルビッシュを1位」に選んだ3人はどういった見解で票を投じたのか。投票後に一人が見解を述べている。

 現在、MLB.comで10年目を迎えたAJ・カッサベルがその人だ。同氏は自身のツイッターを更新し、「1位ダルビッシュ、2位バウアー、3位デグロム、4位ディネルソン・ラメット(サンディエゴ・パドレス)、5位コービン・バーンズ(ミルウォーキー・ブルワーズ)」としたと表明。「1位と2位はばかばかしいほど接戦で、悩みに悩み続けた」という。
 
 そして「バウアーは確かに受賞にふさわしい」としながらも、「ダルビッシュとバウアーの結果はまったくの同等だと考えている」とし、「対戦相手の質の差でダルビッシュが上だと判断した」と語った。「ダルビッシュは76イニングで18失点、バウアーは73回で17失点。そして、対戦相手のwRC+(打撃の総合指標で、球場などの特性を考慮しながら平均を100としたもの。100以上はリーグ平均より上)では、ダルビッシュが94でバウアーが89だった」。 

 同氏は「もっと他にも多くの要素を考慮しているが、両者とも等しく素晴らしいシーズンを送っていた中で、ダルビッシュの方が開幕からわずかにタフな相手と対戦した中で結果を残したことを評価した」と綴っている。

 wRC+はもしかしたら馴染みがないかもしれないが、ダルビッシュもバウアーも同じナ・リーグ中地区に所属しているものの、ダルビッシュは12試合中8試合がシーズン勝率5割以上のチームとの対戦、バウアーは3試合しかなかった、と部分的には言い換えることができるだろう。簡単に言えば、バウアーの方が"楽な相手"に投げていた、という形だろうか。

 確かに投票結果は差がついたが、カッサベル氏の「1位と2位はばかばかしいほど接戦で、悩みに悩み続けた」というのはどの投票者にも共通していたのではないだろうか。また、こうしてつくづく思うのは、アメリカの記者投票はほぼ全員が「誰に」「どういう理由」で投票したのかを明確にしていること。結果に対して責任を負うという点は、日本のアウォード投票では見られないことなので、素晴らしい側面だと感じる。

構成●SLUGGER編集部
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【表】激戦となったナ・リーグのサイ・ヤング賞レース!ダルビッシュ、バウアー、デグロムの詳細スタッツ比較