プロ野球

西川遥輝の穴は有原航平より痛い? 来季の日本ハム打線が抱える「出塁能力」への不安

新井裕貴(SLUGGER編集部)

2020.11.24

走力+出塁能力を高いレベルで示してきた西川。彼の「本当にすごい」選球眼を改めて検証する。写真:徳原隆元

 今オフの日本ハムは、大きな岐路に立っていると言っても過言ではない。すでに報道のある通り、昨年に最多勝を獲得して今季パ・リーグ最多3完投を記録した有原航平と、盗塁王3回のリードオフ・西川遥輝がポスティングシステムを利用してメジャー移籍を目指すことになった。

 先発投手が不足している今オフのメジャーのFA市場では有原の需要が高く、日本人野手がメジャーでなかなか活躍できていないことを受け、移籍報道で見ても「有原>>>西川」といった印象を受ける。確かに"パワーレスな外野手"の西川に、どれだけの球団が獲得の意向を示すかは不透明である。

 もっとも、日本ハムという球団単位で見た時、西川がチームから抜けるようだと、有原以上に「ダメージ」を負う可能性がある。今季リーグ5位に終わった日本ハムは493得点が3位、528失点が5位だった。ここだけを見れば、イニング数が稼げる先発1番手の有原の方が痛手に思えるが、そう簡単ではない。
 
 西川の凄さは、今季もリーグ2位の42盗塁、チーム盗塁数の50%以上を稼ぎ出したスピード面ばかりが強調される一方、真価は「出塁能力」にある。レギュラーに定着した2013年以降、西川の出塁率は打率よりも毎年1割近く高く3割台後半を維持。16年は.403、今季は規定打席に到達した両リーグ全53選手中で4位となる出塁率.430をマークした。

 ボール球スウィング率は2016年以降、毎年両リーグトップ3に入り、18、20年は1位。今季の四球率17.6%はチームメイトの近藤健介に次ぐ両リーグ2位の数字であり、西川の選球眼は本当の意味で「ボールを見極めて稼ぎ出す」ことができる稀有な能力なのである。

 しかも西川はスピードがあるから、シングルヒットで簡単に三塁やホームに還ってくる。昨年は19盗塁と彼にしては少ない数にとどまったものの、UBR(盗塁、盗塁死を除いたベースランニングでどれだけ得点をもたらしたかを示す)は両リーグダントツ1位。

 西川が塁に出ればそれだけ得点機会が多く生まれるわけで、彼が一塁にいることで相手バッテリーは盗塁も警戒しなければならない。それを防ぐためにストレート中心の配球になればしめたもの。後続の打者は狙いを絞った打撃ができるようになり、「打線の潤滑油」としての役割も果たしているわけである。
 
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