▶今季の総括
他球団を圧倒する豊富な選手層をフルに生かした的確かつ巧みな選手起用によって、3年ぶりのリーグ優勝、さらにパ・リーグでは史上初となる4年連続日本一に輝いた。
その最大の特色は「打順」に象徴されていた。リーグ優勝を決めた111試合目の時点で、ソフトバンクが組んだスターティング・オーダーは104通り。コロナ禍の影響で内川聖一や中村晃らが調整に苦しみ、東京五輪の予選出場に備えてキューバに帰国していたデスパイネ、グラシアルの両外国人の再来日がずれ込んだことなどから、工藤公康監督は選手個々のコンディションやチーム状態の変化を踏まえ、固定メンバーにこだわらず、その日の“ベストオーダー”を組む戦略を取った。
こうしたフレキシブルな選手起用の背景には「複数ポジション」をこなせるユーティリティ・プレーヤーが多いことにある。日本シリーズでMVPにも輝いた6年目の栗原陵矢は、捕手登録ながらライト、レフト、一塁を守った。初の盗塁王に輝いた育成出身の周東佑京も二塁、遊撃とセンター、レフト。明石健志も一塁、二塁に外野をこなし、川島慶三は内野の全ポジション、牧原大成は内外野すべてを守れる。工藤監督は、こうした“無限の組み合わせ”を駆使することで、年間を通してコンスタントにチーム力を維持してきた。 投手陣も、ルーキーイヤーの昨季に65試合に登板した甲斐野央が右ヒジ痛、セットアッパーとして台頭した高橋純平も右肩のコンディション不良などで、ともに今季は一軍登板なし。こうした状況下で、すぐに新たな力が台頭してくる。日本シリーズ第4戦の好リリーフで白星を挙げた6年目の松本裕樹、プロ初勝利を含む4勝をマークした6年目の左腕・笠谷俊介らが一本立ち。活発な新陳代謝によって、常に高いレベルでの競争が続いていることが、このチームの「強さの根幹」でもある。
▶2021年のキーマン
砂川リチャード
来季でプロ4年目を迎えるリチャードが、持ち前の長打力とガッツを発揮して、一軍に定着できるか。来季中に38歳になる松田宣浩の“後釜育成”の観点から考えても、チームの将来像を左右する重要なポイントになってくる。
今季、ウエスタン・リーグで本塁打と打点の二冠王。サードの守備でも、ハンドリングは決して悪くない。試合中にも声を出してチームを鼓舞できる陽気な性格でもあるだけに、あとはコンスタントに力を発揮できるだけの心身の安定感を養うことが必要だろう。来季から、かつてホークスの「4番・三塁」として一時代を築いたチームリーダー、小久保裕紀氏が一軍ヘッドコーチとして復帰する。偉大な先輩からの指導を受けることでリチャードが飛躍のきっかけをつかめれば、世代交代もスムースに運ぶだろう。
取材・文●喜瀬雅則(スポーツライター)
【著者プロフィール】
きせ・まさのり/1967年生まれ。産経新聞夕刊連載「独立リーグの現状 その明暗を探る」で 2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。第21回、22回小学館ノンフィクション大賞で2年連続最終選考作品に選出。2017年に産経新聞社退社。以後はスポーツライターとして西日本新聞をメインに取材活動を行っている。著書に「牛を飼う球団」(小学館)「不登校からメジャーへ」(光文社新書)「ホークス3軍はなぜ成功したのか?」 (光文社新書)
他球団を圧倒する豊富な選手層をフルに生かした的確かつ巧みな選手起用によって、3年ぶりのリーグ優勝、さらにパ・リーグでは史上初となる4年連続日本一に輝いた。
その最大の特色は「打順」に象徴されていた。リーグ優勝を決めた111試合目の時点で、ソフトバンクが組んだスターティング・オーダーは104通り。コロナ禍の影響で内川聖一や中村晃らが調整に苦しみ、東京五輪の予選出場に備えてキューバに帰国していたデスパイネ、グラシアルの両外国人の再来日がずれ込んだことなどから、工藤公康監督は選手個々のコンディションやチーム状態の変化を踏まえ、固定メンバーにこだわらず、その日の“ベストオーダー”を組む戦略を取った。
こうしたフレキシブルな選手起用の背景には「複数ポジション」をこなせるユーティリティ・プレーヤーが多いことにある。日本シリーズでMVPにも輝いた6年目の栗原陵矢は、捕手登録ながらライト、レフト、一塁を守った。初の盗塁王に輝いた育成出身の周東佑京も二塁、遊撃とセンター、レフト。明石健志も一塁、二塁に外野をこなし、川島慶三は内野の全ポジション、牧原大成は内外野すべてを守れる。工藤監督は、こうした“無限の組み合わせ”を駆使することで、年間を通してコンスタントにチーム力を維持してきた。 投手陣も、ルーキーイヤーの昨季に65試合に登板した甲斐野央が右ヒジ痛、セットアッパーとして台頭した高橋純平も右肩のコンディション不良などで、ともに今季は一軍登板なし。こうした状況下で、すぐに新たな力が台頭してくる。日本シリーズ第4戦の好リリーフで白星を挙げた6年目の松本裕樹、プロ初勝利を含む4勝をマークした6年目の左腕・笠谷俊介らが一本立ち。活発な新陳代謝によって、常に高いレベルでの競争が続いていることが、このチームの「強さの根幹」でもある。
▶2021年のキーマン
砂川リチャード
来季でプロ4年目を迎えるリチャードが、持ち前の長打力とガッツを発揮して、一軍に定着できるか。来季中に38歳になる松田宣浩の“後釜育成”の観点から考えても、チームの将来像を左右する重要なポイントになってくる。
今季、ウエスタン・リーグで本塁打と打点の二冠王。サードの守備でも、ハンドリングは決して悪くない。試合中にも声を出してチームを鼓舞できる陽気な性格でもあるだけに、あとはコンスタントに力を発揮できるだけの心身の安定感を養うことが必要だろう。来季から、かつてホークスの「4番・三塁」として一時代を築いたチームリーダー、小久保裕紀氏が一軍ヘッドコーチとして復帰する。偉大な先輩からの指導を受けることでリチャードが飛躍のきっかけをつかめれば、世代交代もスムースに運ぶだろう。
取材・文●喜瀬雅則(スポーツライター)
【著者プロフィール】
きせ・まさのり/1967年生まれ。産経新聞夕刊連載「独立リーグの現状 その明暗を探る」で 2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。第21回、22回小学館ノンフィクション大賞で2年連続最終選考作品に選出。2017年に産経新聞社退社。以後はスポーツライターとして西日本新聞をメインに取材活動を行っている。著書に「牛を飼う球団」(小学館)「不登校からメジャーへ」(光文社新書)「ホークス3軍はなぜ成功したのか?」 (光文社新書)