プロ野球

争奪戦必至のチェン・ウェイン。中日、ロッテ時代の”無援護”ぶりを振り返る

THE DIGEST編集部

2020.12.03

9年ぶりの日本復帰でもチェンの“病気”は治らず。ここまで援護がないのも、もはや驚異的なレベル? 写真:SLUGGER

「勝利数では、投手の実力は分からない」――セイバーメトリクスが浸透してきた昨今、この考え方は常識に近いものになっている。

 例えば、ある投手が9回1失点10奪三振で完投しても、味方打線が1点も取れなければ敗戦投手になってしまう。一方で5回5失点といまひとつの内容でも、打線がそれ以上に援護すれば勝利投手になれる。

 勝ち星は、投手の能力でコントロールできる領域とは言えないのである。そして「実力はあるのに勝てない」投手が、オフのストーブリーグを盛り上げている。今季メジャーから9年ぶりに日本球界復帰を果たしたチェン・ウェインだ。彼ほど"無援護病"な投手はなかなかお目にかかれない。
 
 10月14日の楽天戦で3282日ぶりの日本復帰マウンドを踏んだチェン。1回裏に藤原恭大が先頭打者ホームランで幸先よく先取点をプレゼントするなど、出足は最高だった。しかし4回に追いつかれると、6回には勝ち越し本塁打を献上してここで降板。6回2失点と試合を作って味方の反撃を待った。しかし、打線はその後沈黙して1対4で敗戦。チェンの復帰戦は黒星スタートになった。

 続く21日の西武戦も6回まで投げて1失点。打線もチェンが降板した後の7回に1点を加えたのみで、最後はサヨナラ負けを喫した。第3&4戦は最強ソフトバンク。チェンは8回を4安打2失点と素晴らしいピッチングで完投したが、打線は千賀滉大の前に無失点12奪三振に抑え込まれ、0対2で2敗目がついた。そして翌週も、ロッテ打線は千賀に封じられ、6回2失点のチェンは連敗。結果的に日本復帰初勝利はなく、シーズンを終えた。

 4先発で0勝3敗。この数字だけを見れば「失格」と言われそうだが、全登板QS(6回以上を投げて自責点3以下)を記録して防御率2.42。井口資仁監督が「申し訳ない」と口にしたのも納得で、チェンがマウンドにいる時に味方打線が得点を挙げたのは26イニングでわずか1点のみだった。どんな大投手でも、援護1点で勝ち星を重ねるのは不可能な話だ。

 もっとも、チェンの無援護病は中日時代から"発症"していたものなので、多くのファンには既視感すらあったのではないだろうか。特に大ブレイクした2009年、チェンはある意味、衝撃的な成績を残している。
 
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防御率1点代でも2ケタ勝利できず