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史上最年少の女性エージェントは元体操&ボクシング選手…“変わり者”バウアーの代理人の手腕に注目が集まる!

宇根夏樹

2020.12.12

奔放な言動で知られる変わり者バウアー。代理人の選び方もやはり独特?(C)Getty Images

 今季はサイ・ヤング賞を獲得し、今オフのFA市場で最も注目を集めるトレバー・バウアー。歯に衣着せぬ言動や数々の奇行で、MLBきっての変わり者としても知られるバウアーだが、実は代理人も一風変わっている。代理人会社『ルーバ・スポーツ』の代表を務める28歳の女性エージェント、レイチェル・ルーバだ。

 バウアーと同じUCLAの出身で、彼とは大学時代に知り合ったというルーバは、MLB史上最年少の女性認定代理人で、自身でエージェンシーを所有する唯一の女性でもある。ただでさえ女性の代理人は珍しいが、彼女の経歴もまた異色だ。もともとは体操選手だったが、度重なる怪我のために大学までで引退。すると、今度はボクシングへ転向して、全米大学選手権で銅メダルを獲得するまでになった。その後は司法試験に合格して選手会で年俸調停を担当し、1年前にバウアーが代理人をワッサーマン・メディアグループからルーバに変更したことで、選手会から代理人に認定された。
 
 バウアーの注目度が高まるにしたがって、必然的にルーバがメディアに登場する機会も多くなった。まだサイ・ヤング賞が発表される前の11月上旬には、ラジオ番組に出演して「サイ・ヤング賞はバウアーが受賞するべきだ」と主張して話題を呼んだ。

 バウアーと同じく、SNSでの発信にも積極的だ。同じ11月には、2人目のクライアントとしてヤシエル・プイーグが加わったのだが、この際に「バウアーとプイーグが遠投対決したら、どっちが勝つと思う?」とツイート。これには、今オフにレッドソックスからFAになったジャッキー・ブラッドリーJr.も「オレも参戦する!」と反応するなど、ちょっとした騒ぎになった。経済誌『フォーブス』は、ルーバを2021年版「30 Under 30(世界を変える30歳未満の30人)」に選ぶなど、彼女自身に対する注目度も高まっている。

 かつては「FAになった後は1年契約しか結ばない」と発言していたバウアーだが、トップFA選手となった今オフは、5年1億5000万ドル(約156億円)とも言われる超大型契約が予想されている。当然ながら、そのメガディールをまとめるのはルーバの仕事。各球団はコロナ禍によって資金難に陥っていると盛んに報じられているが、ルーバは「そう話すことで選手を脅し、契約をディスカウントしようとしている」と、一切妥協しない姿勢を見せている。果たして彼女がどんな契約を勝ち取るのか、その手腕にも要注目だ。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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