前田健太がドジャースからツインズへトレードされるにあたって、日本のファンの間では歓迎の声が多く上がった。ドジャース時代はシーズン後半に先発からブルペンに回ることが多く、「ドジャースは出来高を支払いたくないから前田をリリーフへ回した」と思われていたのが理由だが、今季の投球ならドジャースもリリーフで使おうとは思わず、ボーナスだって喜んで支払っただろう。
11試合に先発して6勝1敗。防御率2.70は自己ベストで、全登板で5イニング以上に投げ、かつ3点以下に抑えた。ベストパフォーマンスは8月18日のブルワーズ戦で、8回終了時までヒットを1本も許さず、日本人史上3人目のノーヒッター達成目前まで迫った。9回先頭打者に安打を浴びて降板したが、ツインズの球団記録となる8者連続を含む12三振を奪う会心の投球。シーズン終盤を迎える頃には、地元メディアがこぞって前田を文句なしのエースとして認めていた。
もともとコントロールは良い投手だが、今季は66.2回で10四球、与四球率1.35とさらに精密さを増していた。被打率.168もわずか1厘差のリーグ2位。四球を出さず、ヒットも打たれなかったのだから、WHIP0.75が1位だったのも当然だった。トレード獲得時からデレク・ファルビー編成総責任者は「ローテーションの1、2番手を任せられるだろう」と見込んではいたが、サイ・ヤング賞投票では2位に入るなど、期待を大きく超える出来だったことは間違いない。
特に冴えていたのはチェンジアップで、この球種の被OPS.392はリーグベスト。これまで課題としていた左打者の攻略に効果を発揮し、9月にはダルビッシュ有(カブス)へ投げ方を伝授する一幕もあった。前田自身もダルビッシュの動画をヒントとしてツーシームを改良するなど、双方の積極的な交流が今季の2人の好結果につながった。今後も最高レベルの投手との交流を通じ、持ち球に一層磨きをかけていけば、これ以上の結果を残せるのではないか。そんな期待を感じさせてくれる一年だった。
文●出野哲也
【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――"裏歴史の主人公たち"」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。
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11試合に先発して6勝1敗。防御率2.70は自己ベストで、全登板で5イニング以上に投げ、かつ3点以下に抑えた。ベストパフォーマンスは8月18日のブルワーズ戦で、8回終了時までヒットを1本も許さず、日本人史上3人目のノーヒッター達成目前まで迫った。9回先頭打者に安打を浴びて降板したが、ツインズの球団記録となる8者連続を含む12三振を奪う会心の投球。シーズン終盤を迎える頃には、地元メディアがこぞって前田を文句なしのエースとして認めていた。
もともとコントロールは良い投手だが、今季は66.2回で10四球、与四球率1.35とさらに精密さを増していた。被打率.168もわずか1厘差のリーグ2位。四球を出さず、ヒットも打たれなかったのだから、WHIP0.75が1位だったのも当然だった。トレード獲得時からデレク・ファルビー編成総責任者は「ローテーションの1、2番手を任せられるだろう」と見込んではいたが、サイ・ヤング賞投票では2位に入るなど、期待を大きく超える出来だったことは間違いない。
特に冴えていたのはチェンジアップで、この球種の被OPS.392はリーグベスト。これまで課題としていた左打者の攻略に効果を発揮し、9月にはダルビッシュ有(カブス)へ投げ方を伝授する一幕もあった。前田自身もダルビッシュの動画をヒントとしてツーシームを改良するなど、双方の積極的な交流が今季の2人の好結果につながった。今後も最高レベルの投手との交流を通じ、持ち球に一層磨きをかけていけば、これ以上の結果を残せるのではないか。そんな期待を感じさせてくれる一年だった。
文●出野哲也
【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――"裏歴史の主人公たち"」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。
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