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プロ野球

内川よ、福留よ、松坂よ「あがき続けろ!」。斉藤和巳が届けたい“野球人生の終え方”

新井裕貴(SLUGGER編集部)

2020.12.25

ベテランの現役の終わらせ方は難しい。今年契約を結んだ松坂(右)や新天地に移った内川(左上)、福留(左下)への風当たりも厳しいものはあるが、斉藤和巳はその風潮に待ったをかける。写真:滝川敏之(松坂)、THE DIGEST写真部

ベテランの現役の終わらせ方は難しい。今年契約を結んだ松坂(右)や新天地に移った内川(左上)、福留(左下)への風当たりも厳しいものはあるが、斉藤和巳はその風潮に待ったをかける。写真:滝川敏之(松坂)、THE DIGEST写真部

 晩節を汚す――それまでの人生で高い評価を得てきたにもかかわらず、後にそれまでの評価を覆すような振る舞いをし、名誉を失うこと。

 今年もプロ野球では多くの選手がユニフォームを脱いだ。阪神の絶対的クローザー・藤川球児、ヤクルトの豪腕リリーバー・五十嵐亮太、中日で最多勝2回の吉見一起などである。しかし一方で、現役を“続ける”高齢選手もいる。

 今季一軍に昇格できなかった38歳の内川聖一は、ソフトバンクを離れてヤクルトと契約。現役最年長43歳の福留孝介は阪神を自由契約となると、古巣中日に拾われた。そして福留と同じように、昨オフには中日をクビとなった松坂大輔が西武へと復帰。今季は脊椎内視鏡頸椎手術を受けて一軍登板はなかったが、来季の契約を更新されて40歳のシーズンに臨む。

 彼らは一時代を築いたスーパースター。その全盛期を知る者は彼らの凄さを知っているがゆえに、“いま”の姿に寂しさを感じる人もいるだろう。彼らの移籍・契約が決まった時、もちろん好意的な声もあった。しかし一方で「引退すればいいのに」「戦力にならない」「若手の出場機会を奪う」といった否定的な声も少なくなかった。そうした人からすれば、内川も福留も松坂も、「晩節を汚している」選手に当たるのだろう。

 しかし、「悪あがきしろよ!」と、強く内川たちにエールを送る男がいる。沢村賞2回の大投手にして、“晩節を汚した”斉藤和巳である。
 
 190cmを超える長身から放つ快速球とスライダー、フォークを武器とした斉藤は、2003年に20勝、2006年には勝利・防御率・奪三振・勝率・完封の投手五冠を達成してパ・リーグ初となる2度目の沢村賞に輝いた大エースだった。しかし、その後は相次ぐ故障に悩まされ、2007年を最後に一軍登板なし。二軍でもまともに投げることができず5年間を過ごした後、2013年7月に現役引退を発表した。

 斉藤は登板できなかった2008年からの3年間だけで計5億円以上の年俸があったと言われている。エースの凋落に対し、周囲の声は厳しかったとは本人も認めるところだ。それでも、斉藤は戦い続けた、自身の身体、世間の声に。その活力はどこから来たのだろうか。

「野球が、好きだからです」

 斉藤は言う。「内川も、同級生の孝介も、大輔も野球が大好きだから現役を続けているんだと思います。ベテランの選手がレギュラーを張るのは本当に難しいことです。過去の実績なんて関係ありません。それでも、彼らは『まだ野球がしたい』『1年でもプレーしたい』そういう気持ちが勝っているからこそ、現役を続けようと頑張っている。だから、彼らがどんな“あがき方”をするのか、本当に楽しみです」
 
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