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プロ野球

田中、菅野、千賀の動向から見る“移籍制度の歪み”。「FA、ポスティング」の問題点とは?〈SLUGGER〉

中島大輔

2021.02.03

千賀、田中、菅野のオフ動向から、日本球界が抱える移籍制度の問題点について再考する。写真:塚本凜平・金子拓弥(THE DIGEST写真部)、滝川敏之

千賀、田中、菅野のオフ動向から、日本球界が抱える移籍制度の問題点について再考する。写真:塚本凜平・金子拓弥(THE DIGEST写真部)、滝川敏之

 コロナ禍でNPBの春季キャンプが無事にスタートした一方、MLBは2月中旬から予定されるスプリングトレーニングに向けて状況が刻々と変化している。

 まずは機構側が3月下旬への後ろ倒しを提案したが、選手会が反対の姿勢を示したことで4月1日の開幕へ準備が進められることになった。ただし、キャンプ地のアリゾナでは感染者の拡大が止まらず、予定どおりに進むかはわからない。

 同じコロナ禍でも世界各地で状況は異なり、その影響は日米球界に広く及ぶ。とりわけMLBの移籍市場に影を落とすなか、興味深いのが日本人の“大物”投手たちの動きだった。

 田中将大は7年間プレーしたヤンキースをFAとなって楽天に復帰した一方、ポスティングシステムでメジャー移籍を目指した菅野智之は条件面で合意せず、巨人に残留。順調に行けば海外FA権を取得する2021年オフ、「夢」であるMLBへの道を改めて模索するとした。

 さらに、数年前からポスティングの行使を求める千賀滉大は1月30日にソフトバンクの後藤芳光球団社長兼オーナー代行と面会し、「いい話はできた」と語った。海外FA権の取得は早くて2022年シーズンと見込まれるなか、今オフにMLBへ挑戦する道を開こうとしている。
 
 日本のトップ選手が次々とMLBを目指すようになったのは2000年代から続く傾向だが、2010年代に入ってスタジアムビジネスを軌道に乗せたNPB球団は資金力を伸ばし、選手に提示できる契約条件がメジャーに引けを取らないほどになってきた。田中は推定9億円、菅野は同8億円、千賀は同4億円という年俸だ。なかでも田中はMLB球団から「大きなオファー」があったと明かしており、「市場価値を考えると、楽天の年俸は12億円をくだらないのでは?」と話した球界関係者もいる。

 MLBの移籍市場停滞、NPB球団の経営力向上が同時に起きるなか、日本の一流選手は条件的にも日米を天秤にかけられるようになった。対して課題として残るのが、移籍制度の“歪み”だ。

 楽天と2年契約を結んだ田中は、今季終了後にオプトアウト(契約破棄条項)を行使すれば「自由契約」となり、MLB球団とも契約可能になる。ただし登録日数的には、仮に今季をフルに満たしても「海外FA権」に必要な9シーズンに達しない。

 田中の功績を含めて楽天は上記の契約を結んだのだろうが、「外国人選手」のような扱いにするのは保留制度を考えると不公平と言える。個人的には、日本独特の決まりで田中を縛り付けることには反対だが、ルールには整合性が不可欠だ。時代が変わりゆくなか、FA制度の見直しが必要ではないだろうか。
 

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