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プロ野球

藤浪晋太郎が開幕投手を託された必然。奪三振率「12.60」が示す“かっこいい”ドクターKへの期待

新井裕貴(SLUGGER編集部)

2021.03.09

阪神の開幕投手が内定した藤浪。苦しみ続けた右腕が新たに達した境地とは。写真:山手琢也

阪神の開幕投手が内定した藤浪。苦しみ続けた右腕が新たに達した境地とは。写真:山手琢也

 ついにこの男が開幕投手の大役を手にすることになった。阪神は今季開幕戦となる3月26日のヤクルト戦の先発マウンドに、藤浪晋太郎を指名することを決めたようだ。過去2年間で挙げた白星はわずか1勝。しかし、阪神の、矢野燿大監督の決断は“必然”だったようにも思えてくる。

 大阪桐蔭高で春夏連覇の偉業を達成した藤浪は、2012年ドラフトで阪神、オリックス、ヤクルト、ロッテの4球団競合の末に阪神への入団が決まった。そして高卒1年目からその才能を遺憾なく発揮し、セ・リーグ高卒新人では江夏豊以来46年ぶりとなる10勝をマーク。そして3年目の2015年には、史上9人目の高卒1年目から3年連続2ケタ勝利に加え、リーグ最多7完投&4完封、221奪三振王で初タイトルを手にした。しかも、高卒3年目での200奪三振突破は、自身が比較されてきたダルビッシュ有以来2人目の快挙でもあった。
 
 あまりに順調な歩みを見せていた天才だったが、この年をピークに成績は徐々に悪化していく。イップスが疑われるほど制球難が深刻になり一軍と二軍を行き来。2015年オフの契約更改では球団史上最速で1億7000万円まで昇給していたが、わずか1登板に終わった19年オフには半減以上となる6300万円まで下がった。

 さらに昨季は開幕前に女性らとの会食を行い、自身を含めて新型コロナに罹患。ピッチングで見返したかったが4連敗スタート、9月5日の広島戦では球団ワースト11失点の大炎上で涙するなど、あの頃の輝きは消え失せたかに思えた。

 だが、ここで藤浪は終わらなかった。9月末にリリーフ配置換えで一軍再昇格を果たすと、自慢の剛速球がうなりを上げてセットアップに就任。そして10月19日のヤクルト戦では、球団最速記録を更新する162キロをマークしてみせる。こうして自信をつかんでいくと、10月28日の中日戦はブルペンデーの“先発”として再転向。押し出し四球こそあったが4回1失点にまとめ、次の先発登板は6回無失点、そして最終11月11日のDeNA戦も5回ゼロ封の好投を見せたのだった。
 
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