高校野球

“機動破壊”のその先へ。打撃強化でバージョンアップした健大高崎が示す「チームのあるべき姿」<SLUGGER>

氏原英明

2021.03.21

力強いスウィングが印象的だった1回戦の健大高崎ナイン。“機動破壊”からさらに一回りグレードアップした。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 球児にとって、高校野球は3年で終わる。

 しかし、チームにとっての高校野球が途切れることはない。1年、また1年と、それぞれのチームが培ってきた文化は歴史として醸成されるものだ。

 初日の第3試合に登場した健大高崎は、下関国際との初戦に6-1で快勝。5度目のセンバツに挑む関東のチャンピオンは、これまでとは異なる一面を見せている。2回に2つの長打などで幸先良く2点を先行すると、8回裏には相手の失策に2つの長打を絡めて一気に4点を奪って試合を決めた。際立っていたのは各選手のスウィングの力強さで、その戦いぶりの変化に驚かされた。

 もともと、健大高崎が甲子園で名を馳せたのは、走力を生かした"機動破壊"だった。足で揺さぶりをかけて、相手を混乱させる。盗塁はもとより、少しの隙も逃さず次の塁を狙う積極的な走塁で、勝利をもぎ取っていくのだ。

「うちがこんなに走られたのは初めてです」
 
 そんな悔しさをにじませたのは、毎年、強肩の捕手を擁する大阪桐蔭の指揮官・西谷浩一監督だった。2014年夏、試合には勝ったものの、自分たちを相手に4盗塁を決めた健大高崎に、西谷監督は舌を巻いていた。それほどまでに、彼らの"機動破壊"は驚異だった。

 ところが、今大会はその戦い方を大きく変化させているのである。

 昨秋の公式戦本塁打は10試合で15本塁打。2番目に多い大阪桐蔭が11試合で11本塁打だから、その破壊力は推して知るべしだろう。

 ただ、健大高崎は機動破壊でも十分な成績を収めていただけに、ここへきての変化にちょっとした疑問が残るのも事実だ。

 着実な階段を昇っていた中、なぜ強打への転換を目指すようにうになったのだろう。

 青柳博文監督に聞いてみた。

「前々回(17年)のセンバツに出た時に、秀岳館に大差で負けたんですよね(2対9)。力の差を見せつけられた。大差がつけられてしまうと、機動力だけではどうにもできなかった。そこで打撃をつけようということにしました」
 
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