高校野球

「地区大会で大阪桐蔭を倒しても、誰も知らない」平成最強校を“甲子園”で下した智弁学園・小坂監督が目指す場所<SLUGGER>

氏原英明

2021.03.23

初回に2度の満塁の好機を作って一挙に4点を先制。智弁学園らしからぬ積極攻勢の賜物だった。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 大阪桐蔭の5番打者・前田憲伸のバットが空を切ると、乱打戦に決着がついた。

 大会4日、3月23日の第2試合。昨秋の近畿大会決勝と同じカードになった智弁学園vs大阪桐蔭の対決は、8対6で智弁学園が再び勝利した。

 ともにセンバツの優勝経験がありながら、"甲子園の強豪校"という立ち位置では、大阪桐蔭が一手先を歩いていた。それだけに、全国の舞台で智弁学園が勝利した意味は大きい。

 試合後の智弁学園の指揮官・小坂将商の言葉からもこの1勝の価値が語られた。

「目標としているチーム、監督さんとの対戦だった。だから、なんとか食らいついていって、良いゲームをしたいと思っていました。実際に勝つことができて、チームにとっても、僕にも自信になりました」
 
 勝因は智弁学園の積極果敢な姿勢だ。それは初回の攻撃から見られた。

 智弁学園は1回裏、先頭の岡島光星がレフト前ヒット、2番の垪和拓海が強行策の末に死球。さらに3番・前川右京が四球で満塁とすると、4番・山下陽輔は右翼犠牲フライを放ってまず1点。続く5番の三垣飛雄馬にも四球が出て再び満塁となり、6番・植垣洸が左翼線を破る走者一掃のタイムリーを放って、この回一挙4点を先制したのだ。

 小坂監督の就任以降、バッティングに力を入れてきたチームだったが、普段は手堅く行くことの方が多かった。オーダーの作り方にしても、作戦にしてもオーソドックスなスタイルだったが、この大一番で大きく変えてきた。

 さらに2点差に詰め寄られた6回裏にも、智弁学園は果敢な攻撃を見せる。先頭の三垣が出塁した後、ここでも強行して植垣がレフト前に運んでチャンスを拡大。7番の森田空は一度バントの構えを見せたが、2球目にバスターを敢行。これが決まってセンター前のタイムリーとなった。さらに大阪桐蔭の守備が乱れてセンターが悪送球する間に2人目が生還。森田も三塁を陥れ、この後ワイルドピッチが出て計3点を奪ったのだった。

 1回に続く積極果敢な攻めで3得点。ただ、初回とは少し事情が違ったと小坂監督は話す。
 
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大阪桐蔭を倒した先にある「全国の強豪」という呼び声