プロ野球

佐々木朗希と奥川恭伸は日本球界で順調に育つのか?元メジャーリーガーの指揮官が逸材の将来を背負う意味

氏原英明

2019.11.09

佐々木(左)はロッテ、奥川(右)はヤクルトが交渉権を獲得した。両球団の指揮官は、この逸材をどう育てるのだろうか。写真:徳原隆元

 奇しくも、元メジャーリーガーの監督が指揮を執る球団が彼らの働き場となりそうだ。

 2019年のドラフトの大注目選手として挙げられていた星稜高の奥川恭伸、大船渡高の佐々木朗希との交渉権をヤクルトとロッテが獲得した。

 今オフに就任したヤクルトの高津臣吾監督、2年目のシーズンを終えた井口資仁監督は、ともに元メジャーリーガーで、一時期はホワイトソックスのチームメイトだった2人だ。

 投手と野手である彼らの思考はおそらく180度くらい違うのだろうが、ここで注目したいのが、2人の投手に対しての育成方針だ。

 日本では高校生でも完成度が高いと「即戦力」と簡単に言われてしまうが、メジャーリーグでは、そんなことはほとんどありえない。技術はもちろんのこと、メンタル的な部分でも早くから期待することは多くない。それは一方で、メジャーの選手層がそうさせている部分がなくもないだろう。そうしたメジャーの「大事に育てる」育成を知っている両監督だからこそ、どのような育て方をするのかが非常に興味深いのである。

 高津監督は抽選を引き当てた後のインタビューで、奥川についてこんな話をしている。

「ヤクルトの中心選手として、エースとしてヤクルトを支えてほしいと思いますし、その先も日本を代表するようなスケールの大きなピッチャーになってほしい」
 
 この夏の甲子園では、154キロのストレートを投げて、スライダー、カットボール、スプリットなども操った。コントロールも良く、アウトコースの低めに決まるそれぞれの球は、唸りたくなるほどの絶品球だった。

 しかし、年間を通して投げ続けたことがない高校生からしてみれば、プロのスケジュールは過酷だ。加えて、彼らの野球人生はこれからも長く続く。ルーキーイヤーから結果だけを求めるのは、1年は良くても、4、5年後に響いてくることは往往にしてある。

 1年目で仮に10勝をしたとしても、その先がなければ、高津監督がいう「ヤクルトのエース」「日本を代表するようなスケールの大きな投手」になることはできない。

 奥川は「即戦力」だという見方も少なくはないが、監督自身の海外経験を踏まえた上で「高校生でも即戦力と考えているか」と問うてみた。

「早い段階で出てきてもらいたいのはもちろんあるんですけど、来年の開幕からということは考えていないです。うまくいって早い段階で出てくることにあればとは思いますけどね。ただ、育成方法のことについてはまだ話が進んでいないので、これから彼の育成プランを考えて行かないといけないと思います」