プロ野球

「9回打ち切り」が招くクローザー酷使の可能性――監督に求められるブルペン運用のマネジメント力<SLUGGER>

氏原英明

2021.04.06

4月2日~4日の阪神対中日戦は、継投をめぐる両チームの指揮官の判断の是非が論議を呼んだ(写真は阪神の矢野監督)。写真:産経新聞社

 ペナントレースが開幕して1週間を過ぎた。

 今季の特徴として顕著なのは、指揮官の勝負手が早まっていることだ。特に、DH制度がないセ・リーグは調子が上がりきらない先発投手を早々に諦めるケースが目立つ。代打や代走、守備固めも含め、選手交代が活発なシーズンになっている。

 なぜ、勝負手が早まるのか。それは、今シーズンは9回で打ち切りすることが決まっているからだ。

「9回から先を見なくていい」。言葉にすればそうなるのだが、それによって指揮官たちが選択するのが「9回から逆算する」戦い方だ。

 12球団、どのチームにも勝ち試合の最後を締めくくるクローザーがいる。日本語にすると「守護神」だ。リードして9回を迎えれば、監督は試合を締めてくれる「守護神」を迷いなくマウンドに送り出す。

 一方、相手はクローザーが出てくるまでに勝負をつけたいという気持ちで試合に臨んでくる。そのつばぜり合いがあるから、勝負手が早くなるのだ。
 
 開幕から1週間を終えて見えてきたのは、「9回をマネジメントする」ことで特定の投手に負荷がかかる可能性だ。

 先ほども書いたように、今季は9回で打ち切りとなる。つまり、9回を迎えた時点で同点の場合は、最終イニングを抑えれば負けることはない。この状況で「クローザー」(守護神)を起用するチームが多いのだ。現時点では漆原大成(オリックス)、松井裕樹(楽天)以外のクローザーが、チームがリードしていない状況での登板を余儀なくされている。

 勝利を締めるはずの役割のクローザー(守護神)がセーブ・シチュエーションはおろか、勝利につながらないかもしれない試合の最後を託される。これからも同じ起用が続けば登板過多につながり、シーズン終盤に疲れが蓄積することがあるかもしれない。

 「引き分け」をいかにマネジメントしていくか、クローザーをどう運用ししていくかが、2021年のカギになる。

 クローザーの起用で賛否両論が渦巻いたのが4月2~4日の阪神対中日の3連戦だった。この3連戦では、今季ならではのリリーフ起用の難しさが浮き彫りになった。