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「一塁盗塁」ルールはどうなった?アトランティック・リーグが実践する「より良いベースボール」のための試行錯誤【豊浦彰太郎のベースボール一刀両断!】<SLUGGER>

豊浦彰太郞

2021.06.04

一塁盗塁とは、要は「第3ストライクでなくとも振り逃げができる」ということ。確かにメリットがそれほど増えるわけではなさそうだが……。(C)Getty Images

 現地時間5月27日、米独立リーグのアトランティック・リーグ(ALPB)が開幕した。ALPBは数年前からMLBと提携して各種新ルールの実験を行っており、そのいくつかはMLBで実際に採用されている。申告敬遠やワンポイント禁止(投手は打者3人へ投球するか、イニング終了まで交代できない)などがそうだ。球審がストライク&ボールの判定をAIの判断をもとに行う、通称「ロボット審判」も将来的な採用が濃厚と言われている。

 今季後半戦からは、投手プレートと本塁間を1フィート(約30センチ)延長するというラディカルな試みが始まる。このルール変更は、守旧派のファンや関係者を不安に陥れているかもしれない。

 しかし、どれもこれもMLBで採用になるというわけではない。中には大いにハズレで、お蔵入りになりそうなものもある。代表的なものが「一塁盗塁」だ。これは、ロボット審判同様に、2019年後半戦に試験的に導入されたが、ロボット審判とは異なり今季の新ルール実験メニューには入っていない。
 
「一塁盗塁」とは、三振振り逃げ以外の場合でも、捕手が投球を後逸した場合は一塁に向かって走れるというものだ。新ルール導入直後の19年7月13日に、サザンメリーランド・ブルークラブスのトニー・トーマス選手が初めて記録した。

 しかし、その後はフォロワーが現れたという報道は見つからない。ぼくが同年8月に同リーグを取材で訪れた際も、3試合観戦した中で計5回、打者が一塁に走れるチャンスがあったが、誰もそうしようとはしなかった。それは記録上の問題もある。一塁に駆け込みセーフを勝ち取っても安打にも盗塁にもならない。走っているのに、記録上はウォーク(四球)になるのだ。三振の場合とは異なり、アウトになる危険を冒してまで走る意義は見出せないということではないだろうか。