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プロ野球

村上宗隆の“進化”を示す驚愕のデータ。ゴロ率が上昇しても本塁打を量産できる理由は?

勝田聡

2021.06.26

本塁打王獲得へ邁進する村上。実はデータを見ていくと、面白い変化を知ることができる。写真:滝川敏之

本塁打王獲得へ邁進する村上。実はデータを見ていくと、面白い変化を知ることができる。写真:滝川敏之

 村上宗隆(ヤクルト)の4番がすっかり板についた。

 6月24日終了時点(以下同)で22本塁打は両リーグトップの数字。また本塁打率(打数/本塁打数)は昨シーズンの15.1から10.2と大幅に上がっている。

 豪快な一発のイメージが強いので、さぞフライ打球が増えているように思うかもしれないが、打球傾向を見ると意外な“変化”がうかがえる。なんと、フライ率は52.3%から48.2%と下がり、ゴロ率が38.1%から43.5%へと上昇しているのだ。

 一般的に本塁打の多い打者はフライ率が高い。また、フライボール革命の流行でもわかるように、打者は本塁打や長打を増やすためにフライを打とうとする。一見するとフライ率が減少していることで本塁打は減りそうだが、村上の場合はそれがあてはまらない。

 そこで村上のフライ率を分解してみると、外野フライ率(外野へ飛んだ本塁打も含むフライ性の当たり)は46.1%から44.6%への微減だが、内野フライ率(内野へのフライで安打も含む)を6.1%から3.6%と大きく減らしている。また、フライのうち外野フライが占める割合は、88.2%から92.6%へ上昇した。

 今シーズン10本塁打以上を記録している17選手の中で、村上よりも内野フライ率が低い選手は柳田悠岐(ソフトバンク/1.9%)、オースティン(DeNA/2.3%)の2人しかいない。ちなみに、チームメイトの山田哲人の内野フライ率は8.1%となっており、村上の倍以上である。
 
 内野フライ、いわゆるポップフライは安打になる可能性も低く、走者がいる場合に進塁もほぼ期待できない。“中身のないアウト”が減少傾向にあるというのは、言い方を変えると、打ち損じが減ったということだ。

 そしてもうひとつ。外野フライがどれだけ本塁打になったかを表すHR/OFという指標に大きな変化があった。昨シーズンのHR/OFは19.6%だったが、今シーズンは29.3%と10%も上がっている。簡単に言えば、外野に飛んだフライの約3割が本塁打になっているということだ。そしてこの数字も、今季3本塁打以上の選手の中で最も高い割合だ。

 今シーズンの村上は、フライ率自体は減少したものの、打ち損じも同時に減った。そしてフライの中でも外野への打球は増加している。と同時に、その外野フライが本塁打になる割合も増えた。ここまでの数字を見る限りでは、本塁打を増やすため、単純にフライを打ち上げるだけのアプローチをしているわけではないように映る。

 これから先さらなる進化を遂げ、打ち損じを減らしたままフライ率を昨年と同水準にまで上げることができれば、単純計算で本塁打はさらに増えることになる。机上の空論ではあるものの、日本代表でも活躍が期待される天才打者なら、やってくれそうな気もする。

文●勝田聡
※データ提供:データスタジアム株式会社

【著者プロフィール】
かつた・さとし/1979年生まれ、東京都出身。人材派遣業界、食品業界で従事し30代後半で独立。プロ野球、独立リーグ、MLBなど年間100試合ほど現地観戦を行っている。2016年から神宮球場でのヤクルト戦を全試合観戦中。

【動画】“令和の怪童”・村上が“令和の怪物”・佐々木から完璧アーチ!
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