高校野球

見事な継投策で「超えなければならない壁」だった浦和学院を撃破。日大山形の壮大な野望<SLUGGER>

氏原英明

2021.08.21

3回戦進出を決めて笑顔を見せる日大山形の選手たち。荒木監督の継投策が見事に決まった。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

「歴史にチャレンジするためにはこの試合を勝たないといけない。強い意志を持って戦っていこう」

 今日の試合を前に、日大山形の荒木準也監督はそう言って選手たちを鼓舞したという。

 夏の甲子園における山形県勢はベスト4が最高という事実を考えれば、その言葉の真意は「初制覇」ということで間違いはないだろう。しかも、この日の対戦相手となった強豪・浦和学院は、以前から練習試合を何度もして「超えなければいけない壁」と設定していたチームだった。

 荒木監督は言う。

「いつも春先に練習試合をさせていただくのですが、うちも浦和学院のように泥臭いチームを作りたいと思っていた。浦和学院の選手たちは一つのボールに対し、全員の意識が強い。自分にも人にも厳しい。我々のチームが熱く泥臭く粘り強い野球をすることを目標にしているのは、浦和学院から学んだんです」
 戦った経験から強豪であると感じているからこそ、その相手に勝ち切ることで、自信を深めていく。荒木監督は一つの物差しとしてこの試合を捉えて、試合に臨んだのだった。

 だが、日大山形は浦和学院の先制攻撃を受けてしまう。1回表、2死を取った後に中前安打を許すと、大会注目の打者・吉田瑞樹に左中間を破る適時三塁打を打たれてしまう。さらに、藤井一輝にもタイムリーを許して2点のビハインドを背負った。

 しかし、日大山形は即座に反撃に出る。その裏、先頭の秋葉光大が四球で歩くと、犠打で二塁へ進んだあと、3番の佐藤拓斗が左中間を破る二塁打を放って1点。さらに、5番・塩野叶人がレフトへ適時打を放ち同点に追いついた。

 両チームともに複数の投手を抱えているだけに、初回からノーガードの打ち合いのような試合展開は総力戦を予想させた。そして迎えた3回の表裏の攻防が、この試合のキーポイントとなった。

 浦和学院は1死から4番の吉田がレフトへの二塁打で出塁、続く藤井も続いて一、三塁と好機を広げた。しかし、続く高松陸は3-2のカウントからランエンドヒットを仕掛けるも、これが遊撃ライナー。一塁走者が戻れず、あえなく併殺打となったのである。
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両チームの明暗を分けた継投のタイミング