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殿堂入りしたデレク・ジーターの名場面5選!“ザ・フリップ”に“ザ・ダイブ”、そして数々の殊勲打<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2021.09.09

殿堂入り式典でスピーチするジーター。式典には多数のヤンキースファンが詰めかけ、現役時代の愛称である“キャプテン・クラッチ”コールを送った。

 現地9月8日、クーパーズタウンで殿堂入りセレモニーが行なわれ、デレク・ジーターが新たにメンバーに迎えられた。ヤンキースひと筋で20年間プレーしたジーターは、華麗なプレースタイルとともに、ここぞという場面での無類の勝負強さでも知られた。そんなジーターの名場面を5つ紹介しよう。

▼チームの窮地を救った"ザ・フリップ"
(2001年10月13日)

 数あるジーターの名場面の中でも白眉と言えるのがこのプレーだ。シリーズ最初の2戦を落とし、敗退の瀬戸際に追い込まれたヤンキースはこの夜、5回に1点を先制。しかし、好投を続けてきた先発のマイク・ムシーナが7回2死一塁からテレンス・ロングにライト線を破る一打を浴びる。

 さらに、右翼手の返球がカットオフマンを大きく超え、ボールが転々。一塁走者のジェレミー・ジアンビは三塁を周って一気にホームへ突っ込んだ。誰もが同点と思った瞬間、どこからともなく飛び込んできたのがジーターだった。素早くボールを拾い上げ、そのまま走りながら捕手にトスすると、ジアンビはホームでアウト。このプレーをきっかけにシリーズの流れが変わり、ヤンキースは3連勝でシリーズ勝ち抜きを決めた。

 大舞台での一瞬の判断とひらめき。まさにジーターの凄味を凝縮するようなプレーだった。
 
▼真夜中のサヨナラ弾で"ミスター・ノーベンバー"に
(2001年10月31日)

 ジーターの活躍によって地区シリーズを制したヤンキースは、マリナーズとのリーグ優勝決定シリーズも制し、4年連続でワールドシリーズへ駒を進めた。だが、チームは1勝2敗とダイヤモンドバックスに先行を許し、ジーターも一転して不振に。15打数1安打と抑え込まれたまま第4戦の延長10回裏を迎えた。

 すでに真夜中を過ぎ、日付は11月1日となっていた。2死走者なしで打席に入ったジーターはキム・ビョンヒョン相手に8球粘り、フルカウントまで持ち込む。9球目、アウトコースのボールを強振すると、打球は華麗な放物線を描き、ライトスタンドへ一直線に飛び込んだ。

"ミスター・オクトーバー"ならぬ"ミスター・ノーベンバー"。大舞台でより一層輝きを増すニューヨークの貴公子に、新たな呼び名が付いた瞬間だった。

▼伝統の一戦で見せた"ザ・ダイブ"
(2004年7月1日)

 ヤンキー・スタジアムで行なわれた宿敵レッドソックスとの首位攻防戦は、3対3のまま延長へ突入した。12回表、レッドソックスは2死二、三塁と勝ち越しのチャンス。ここで代打のトロット・ニクソンが三塁線にフライを打ち上げる。

 フェアゾーンぎりぎりに落ちるかと思われたこの一打を、ショートから猛然とダッシュしてきたジーターがスーパーキャッチ。勢いあまってそのまま観客席まで飛び込んだ。ファンに助け起こされたジーターはあごを負傷して病院直行を余儀なくされたが、キャプテンのハッスルプレーに闘志を触発されたヤンキースナインはサヨナラ勝ち。また、ジーターも7針も縫う重傷を負いながら、翌日のデーゲームに平然と出場した。

 "ザ・ダイブ"と名付けられたこのプレーは、のちに"ザ・フリップ"とともに場面をかたどったボブルヘッドが作られるほどの伝説となった。